「百万円貰ったら」のストーリー

ジョン・グリッデンは一代の成功者で巨万の富を築いた男であるが、彼は今死に面している。しかし彼には財産を譲るべき息子はなく、欲深の親類縁者はウヨウヨしているが誰一人としてグリッデンの事業や家を継ぎ得る資格者はいない。グリッデンは悩んだ末に百万ドル宛を未知の人たちに与えることを思いついた。彼は電話帳を繰って薬瓶から落ちた滴によって分配者を定める。幸運の薬液の滴を第1に頂戴したのは皮肉や紙幣偽造の常習犯エディー・ジャクスンというお尋ね者だった。百万ドルの小切手を掴んだ彼が銀行に駆けつけると、現金に換えてくれるどころかその筋に突き出すぞと脅かされた。そこで博打仲間にかけ合ったが誰もエディーの小切手を本物だと思わず、とうとう気狂いとして警察に引き渡されてしまい、小切手は焼き捨てられた。次の幸運者は波止場の闇の女ヴァイオレットだ。彼女は有頂天になり、第一流のホテルに収まり贅を尽くした衣装をつけ、初めてベッドを独占した。彼女は伸び伸びと一人寝の快さを味わった。第3はあるカフェの常連の3人組の水兵の一人ギャラガーだ。彼は百万ドルの小切手を手に握りながら、これは誰かの悪戯だと鼻で笑ってカフェの番頭に小切手を使ってしまう。彼は番頭をからかう心算だったが翌日彼ら3人組の水兵が見たのは堂々たる自動車に愛人と同乗している番頭の得意ぶりではないか。第4の幸運児は不幸な死刑囚だった。地獄の沙汰も百万ドルあればどんなにでもなるのに、小切手が着いた時には彼は電気椅子の上に伸びていた。これにはグリッデンもクサったが第5の幸運者を訪れた。それは商品破損常習のサラリーマンで、弁償金で給料がマイナスになるというそそっかしいヘンリィ・ピーボディだ。百万ドルを得た彼は勇気漂然翌日出社すると片っ端から貴金属を破損して、現金で弁償したのである。次は働けど働けど認められず薄給に酷遇されていた下級サラリーマンが百万ドルを授かった。社長室に闖入した彼は百万ドルの力で心行くばかり社長を罵倒して悠々と引き上げた。芸人上がりのエミリィとロローの夫婦は喫茶店を営んでいるが、多年倹約して蓄えた金で買ったフォードに初のりに出た日トラックと衝突して見事粉砕された、という怨恨が骨の髄まで達している。百万ドルの幸運が訪れたときに彼らが買い込んだのは古風な大型自動車だった。2人は街中を乗り回してはトラックを粉砕してフォードの恨みを晴らす。百万ドルを握った人々の姿に微苦笑を禁じ得なかったグリッデンが最後に訪れたのは老人アパートに住む不幸なウォーカー婦人だった。この老女は横暴な監督女と人々の薄情さに苦しめられていたが、彼女が百万長者になるとたちまちウォーカー婦人を会長とする老婦人クラブが設立された。そして横暴な監督女はウォーカー婦人に平身低頭した。グリッデンは百万ドルを分配して歩きながら想像もしなかった世の人々の姿を見た。そして終わりに彼自身幸福を得たのである。彼は重役会議出席を断ってウォーカー婦人と相乗りでドライブに出かけたのである。