「美しいひと(2014)」のストーリー

1945年8月、アメリカによって日本に投下された原爆の犠牲者は、広島・長崎あわせておよそ21万人。そのうち約4万人が、当時、日本が植民統治していた朝鮮半島からの労働者、あるいは移住者であった。韓国・釜山から車で2時間ほどのところにある陜川原爆被害者福祉会館は、被爆した韓国人が安定した老後を暮らすために建設された施設である。日本政府と韓国政府の支援のもと1996年に開館した。現在入居しているのは、日本で青春時代を過ごした主に70歳代から90歳代の人々。様々な苦難を乗り越えてたどり着いた平穏の時をそれぞれが思い思いに暮らしている……。長崎市の爆心地付近には太平洋戦争によって日本軍に捕えられた連合国軍兵士の捕虜収容所があり、イギリス人やオランダ人、オーストラリア人など195名が被爆、うち7名が命を落とした。炎に巻かれ、助けられずに置き去りにした友、原爆投下後の街で見た焼け焦げた子どもたち。捕虜として受けた辛酸を乗り越え、日本から遠く離れたオランダの地で長い戦後を生きてきたオランダ人元兵士が当時の忘れられない記憶を辿る……。龍智江子さんは16歳の時に長崎で被爆。家族を失い、戦後は看護助手などをしながら生きてきた。ひとり息子の周二さんは、原爆の後遺症と辛い記憶を抱える母親を見守り続け、自身も被爆二世としていわれのない差別に心を痛めた時期もあったが、自分を育ててくれた母親への感謝を語るのだった……。