「命をつなぐバイオリン」のストーリー

1941年春、ソ連の支配下にあったウクライナのポルタヴァに、神童と呼ばれる二人のユダヤ人の子供がいた。アブラ―シャ(エリン・コレフ)はバイオリン、ラリッサ(イーモゲン・ブレル)はピアノの演奏で人々を魅了し、称賛を浴びていた。だがソ連の幹部たちは二人が完璧な演奏をすることができるのは、自分たちの党の体制が素晴らしいからだと宣伝の道具として彼らを見ていた。ポルタヴァに住んでいたドイツ人少女ハンナ(マティルダ・アダミック)もバイオリンの才能に恵まれ、アブラ―シャやラリッサと一緒にレッスンを受けたいと願っていた。そんなハンナに対し最初は警戒していた二人だったが、二人の音楽教師でユダヤ人のイリーナ(グドルン・ランドグレーベ)がハンナにレッスンを始めると打ち解け、次第に3人は固い友情で結ばれていく。やがてドボルザークの“ユーモレスク”の練習を通じて、音楽への情熱が3人同じものだと感じ取るのだった。そんな中、ヒトラーが独ソ不可侵条約を一方的に破棄、ドイツ軍がソ連に戦争を仕掛け、ポルタヴァ在住のドイツ人は一夜にして敵となってしまう。やがてヒトラーの支配下となったこの地で、3人の子供たちは“友情の曲”を作曲、大人たちが起こした戦争は自分たちには関係ないと、更に絆を深めていく。しかしナチスはユダヤ人絶滅計画を遂行、ソ連の幹部たちと同じく、二人の神童を宣伝のために利用しようと考えていた。ナチスのシュヴァルトウ大佐(コンスタンティン・ヴェッカー)は、ヒムラーの誕生祝賀会で完璧な演奏を行えば、アブラ―シャとラリッサを特別待遇として強制収容所送りを免除してやると3人に伝える。10月。運命のコンサートの幕が上がり、命を賭けた3人の演奏が始まった……。