「暗黒街の女(1928)」のストーリー

カリフォルニアのフォルサム刑務所で、一死刑囚が処刑された。その時彼の妻は、生まれたばかりの女児を抱いて官憲に復讐することを誓う。その赤ん坊イヴォンヌは、後カンサス州ウィチタの町で成長し、一人前の娘となったが環境の影響は彼女を暗黒界の女にしていた。イヴォンヌ(クララ・ボウ)にはテッド(リチャード・アーレン)という若い泥棒の情夫がいた。テッドは年こそ若いが大胆不敵な銀行専門の大泥棒で、いつどこで警官を殺してしまうかも知れないような短気者だった。イヴォンヌはテッドの仕事には常に付き添い、彼に人殺しをさせないように注意していた。死刑囚を父に持った彼女が愛するテッドだけは死刑台上の人にしたくないと思うのは無理からぬ女心だったが、鼻っ柱の強いテッドはイヴォンヌの深い情愛を解せず、泥棒家業をやめそうな気配はない。ところがある時、テッドはイヴォンヌに自動車を運転させ銀行を襲ったが、イヴォンヌの指輪から警察に足がつき、逃走してカリフォルニアの田舎に隠れる。そこで2人は結婚して楽しい家庭を作ったが、それも束の間、テッドは隠遁生活が厭になり、ソフト・アニー(メアリー・アルデン)というよからぬ女の家へ悪事相談に出かける。驚いたイヴォンヌは夫の後を追ってアニーの家で、アニーやテッドの以前の情婦マリー(ヘレン・リンチ)と大立ち廻りを演じるが、そこへ警官がやって来る。テッドが早まって発砲したためイヴォンヌは警官の弾丸を受け、辛くも隠れ家へ逃げ帰る。ところがマリーが復讐心からこの隠れ家をその筋へ密告し、手が廻ってしまった。イヴォンヌに勧められ、改心しようと思っていたテッドも、破れかぶれになって警官に発砲。今はこれ迄とイヴォンヌも懸命に戦い、ついに逃げ道を見つけ虎口を脱した。一旦は改心しかけたテッドだがこれを契機に、以前の巣窟へ戻り悪事を働く、とイヴォンヌに告げる。思案に余ったイヴォンヌは、彼女を置き去りにしようとするテッドの背後から脚を撃ち、涙と共に諄諄と正しき者の幸福を掻き口説いた。さすがのテッドもイヴォンヌの愛に感じ、行く末の幸福を胸に描いて、刑務所へ引かれて行った。