「暗黒街(1927)」のストーリー

犯罪の都ことシカゴの暗黒街にブル・ウィード(ジョージ・バンクロフト)という稀代の大盗賊がいた。彼は常に唯一人で「仕事」をし、別に子分を養うことをしなかったが、自然にそなわる大親分の気慨が、人に一目置かせ敬服させるのだった。ある時真夜中に銀行破りをした時、一人の酔っ払い(クライヴ・ブルック)に目撃され、彼を脅して隠れ家に連れ帰る。そして秘密を厳守することを約束させて赦してやった。その時酔っ払いが口走った言葉から、ブルは彼をロールス・ロイス(高級自動車)と呼ぶようになる。ある日ブルが「夢の国」というカフェに情婦のフェザース(イヴリン・ブレント)を伴って行った時、かねてよりフェザースに懸想している対立する親分株の悪党バック・ムリガン(フレッド・コーラー)も来ていた。そしてフェザースの目の前でムリガンは、痰壺へ十ドル札を投げ込んで、掃除人のロールス・ロイスに拾えと命じた。しかし、ロールス・ロイスは今は落ちぶれているが以前は弁護士ををしていた程の男であり、当然のごとく知らぬ顔をした。面子を潰されたと激怒したムリガンはロールス・ロイスを殴り倒し、殺しかねない勢いだ。見かねたブルはロールス・ロイスを救い、そのため面目が丸潰れとなったムリガンは、深くブルを恨み復讐を誓う。ロールス・ロイスはブルの保護を受け、禁酒して以前のような紳士に戻る。フェザースはいつしか彼に恋を覚え、それとなく意中を仄めかしたが、義を重んずるロールス・ロイスは恩人の女に手出しをせず、彼女にそれを告げる。暗黒界の年一回の催したる「休戦日」と称する舞踊会の晩がきた。そして、ブルの情婦フェザースが舞踊会の女王に選ばれた。ブルが酔い潰れたのを見たムリガンは、委員として彼女に花輪を与えると称して暴行を加えようとする。それを知ったブルは怒り狂い、ムリガンを追って射殺する。殺人罪で起訴されたブルは、死刑の宣告を受けた。彼に恩を蒙るロールス・ロイスたちはブルを救い出すために、死刑の一時間前に棺車に一味の者を乗り込ませて脱獄させようとするが、失敗する。一方獄中のブルは、ロールス・ロイスとフェザースの関係を邪推し、復讐するために単独で巧みに脱獄し、古巣へ舞い戻る。脱獄失敗と知ったフェザースがそこへ帰ってくるが、彼女を追ってきた警官隊は、隠れ家に機関銃を猛射した。激戦中に、ブルを救いに抜け道からロールス・ロイスが現れた。そこで、ブルは初めてロールス・ロイスとフェザースの清い愛を知り、二人を逃げさせるため単身白旗をかかげ、警官隊に降伏するのだった。