「ある男の過去」のストーリー

どうせ助からぬ病人だから生かして苦しめるよりは、と患者を安楽死させた罪でポール・ラロシュ(コンラート・ファイト)は医師の免状を取り上げられ、地中海の孤島モントヌアー刑務所に流刑された。ある日、刑務所で騒ぎが起こり刑務所長が負傷した。所長助手デスタン中尉(アーサー・エドモンド・カリュー)は、ラロシュに傷を治したら罪を許すと約束し、所長の手術をさせる。手術の結果は大いによく、所長は全快に赴いたが、中尉とラロシュとの約束を知り、これを破ろうとしたので、ラロシュは遂に脱獄する。彼はマルセイユで名高いヘンリー・フォンテーヌ医師(アイアン・キース)を頼る。ところがフォンテーヌは眼病で視力を失っていたので、ラロシュは手術の際に、フォンテーヌの身代わりをつとめることに。ある日、病院で手術主治医ルノーに熱望されてラロシュはフォンテーヌと名乗り、本当のフォンテーヌと彼の妹イヴォンヌ(バーバラ・ベッドフォード)を連れてアルジェリアに赴任する。フォンテーヌこと実はラロシュの名声は日増しに上がり、ある日アラブの感謝により砂漠の家に招待される。ところがその時、偶然この地を視察に来たデスタンに逢う。大尉はイヴォンヌに恋するが、イヴォンヌはラロシュの親切に感謝し、彼を憎からず思っていた。そしてラロシュも彼女に恋を覚えて密かに悩んでいた。ラロシュはデスタンが自分の前身を知っているので、悶え苦しむ。それを知ったフォンテーヌは、恩人であるラロシュを救うため、大尉を射殺。大尉が死ねば自分は安全であるが、医師としての責任を感じたラロシュは、結局大尉の命を救ってしまう。大尉は全快すると、ラロシュの名を記した医師免状を彼に与え、彼らが新生活に入ることを望んでモントヌアーへ帰還した。