「旅路(1958)」のストーリー

イギリス海峡に臨む海岸町ボーンマス。夏は海水浴客でにぎあうが、冬は、孤独な男女の避難所となる。霧の深い冬の夕方、古ぼけた小さなホテル“ボーリガード”の前で、シビル(デボラ・カー)は、何日かぶりでホテルに帰って来たボロック少佐(デイヴィッド・ニーヴン)に会った。少佐は何か気がかりなことがあるようだったがシビルは気がつかなかった。一見快活そうに見える少佐も、内気なシビルと同じく内心は孤独感にさいなまれていた。この2人はまた好意以上のものを感じあっていた。ホテルの滞在客はシビルの母ベル夫人、貴族出のレディ・マセソン、「競馬新聞」を手ばさないミーチャム嬢、過去の思い出だけに生きるファウラー、医学生のチャールズ、その恋人のジーン、それに人生に大きく傷ついた感のあるアメリカ人の作家マルカム(バート・ランカスター)であった。ホステスのホテルの経営者クーパー嬢(ウェンディ・ヒラー)はマルカムに献身的な愛をもち、またマルカムも結婚を申し込んでいた。しかし、いつか、昔の女がやって来てマルカムを取り返していくのをおそれていた。この恐れは現実となって現われた。突然ひどく派手な客、アン(リタ・ヘイワース)がやって来た。女の本能からクーパーはアンがマルカムの昔の女であることを知った。こんなある日、1つの事件がもちあがった。少佐が映画館で婦女子にいかがわしい行為を働いて留置場に入れられたというのだ。かねて、2人の仲を快く思っていなかったベル夫人は、強引に少佐追い出しを決めてしまった。1夜あけた朝、人々は自らの孤独感をひしひしと感じていた。シビルにはげまされた少佐はホテルにとどまって欠点を直すことを決意した。マルカムもアンの率直な告白を聞いて新しい出発を考えたークーパー嬢のきびきびしたホステスぶりで、ホテルの1日は明けていった。