「大帝の密使(1937)」のストーリー

アレキサンドル二世がロシアを治しめす一八七〇年頃、未開の民ダッタン人が東方の辺境を犯す機運が見えた。指揮者はかつてロシアの陸軍を免官されたオガレフであった。その頃シベリア・イルクツクにおはすウラジミル太公の許へ、皇帝の密使を届けるために特に選ばれたのは近衛の大尉ミハエル・ストロゴフであった。ミハエルは身の栄光に感激し勇躍して万里踏破に上った。彼は危険を予期し変装して一介の旅人に扮し旅路を急いだが、早くも彼の後をつける女間謀ザンガラがあった。ミハエルの旅は苦しかったが途すがら美しいロマンスの花も咲いた。ただ一人シベリアにある父を慕って旅する麗しの処女ナディアが彼の道連れとなったのである。彼らは雪のウラルも無事に越えた。ダッタン人等は密使来るの謀報を得て警戒網を張ったが、二人は辛くも虎口を脱しつつ東へ東へと進んだ。ダッタン人はトムスクにいるミハエルの老母マルファを囮にして彼を待った。孝心深き彼はそのためについに捕らわれの身となり、しかも障害者にされて追放され、あまつさえ密書まで奪い去られた。その密書を携えて使者の如く装い、太公の許へ参じたのはオガレフであった。彼の腹黒い謀略を知らぬ太公の身には恐ろしい危険が迫っていた。しかし愛国の赤誠に燃ゆるミハエルはナディアに助けられつつ遂に万難を排して危機一髪の間に至って、首尾よく太公の身を安泰ならしめダッタン人を粉砕することが出来た。たいめいを終わって首都へ帰ったミハエルは、この功によって名誉ある爵位を授けられ、ナディアはストロゴフ公爵夫人となったのである。