「ゼンダ城の虜(1937)」のストーリー

時は19世紀の終りであった。英国の紳士ルドルフ・ラッセンディルは、好きな釣りをするため、はるばるとヨーロッパのある公国内へ出かけて行った。折からこの国では領主ルドルフ大公の載冠式が行われるので、各方面からの賓客や見物人で国境の旅館検閲所はごった返していたが、役人たちはラッセンディルを見て驚きの目を見はった。それは彼の顔が余りにも大公と生写しだったからである。ラッセンディルはゼンダ領内の河畔で1人釣糸をたれている時、偶然にもルドルフ大公と忠臣ゼプト及びフリッツとめぐり会う。彼と大公はお互いに多少の血縁のあることも判って、その夜は大公の狩小屋に一夜の歓待を受けたが、それは丁度載冠式の前夜であった。大公の異母兄マイケル公爵は、母が身分の低い女であったため、兄でありながら領主になれぬことを恨みに思い、この夜人を使って大公の酒盃に麻酔薬を盛らせた。そのため大公が式に出られぬのを幸に、自分が代って領主となることに、腹心の剣客ルパート大尉と計画をめぐらしていた。夜は明けたが大公は眠からさめなかった。ゼプトとフリッツは公国の危機を救うため大公と瓜2つのラッセンディルを身代りとして式に列席させることを説得し、人々の待ちうける寺院へ乗込んで式を済ませた。そしてその夜直ちに狩小屋へ引帰してみると、大公はマイケルの居城であるゼンダ城の奥深く幽閉されていた。やむなくラッセンディルはそのまま大公になりすまし、何も知らぬ大公の美しい許嫁フレヴィア姫と一緒に舞踊会やその他の場所へ出なければならなかった。マイケルの愛人アントアネットは、彼が領主となれば自分は棄てられるのを知っていたので、秘かにラッセンディルを手引して夜のゼンダ城へ案内した。その夜マイケルはアントアネットに横恋慕するルパートと争って刺れてしまう。ラッセンディルは剣客ルパートと一騎討を演じ、ついに幽閉された大公を無事に連れ出すことができた。そして後は秘かに愛していたフレヴィア姫に別れを告げ、ゼプトとフリッツの2人に送られて、夜明けの国境を遠く離れて行った。