「陽気な姫君」のストーリー

欧州のある公国の当主フランシス・ジョセフ大公には未だ良き御配偶がなかった。国内統治の実権を握っている大公の母君は、ジョセフの御妃として彼女の義弟であるバヴァリアの大公マクスの姉娘ヘレナを迎えることに一人で決めていた。フォン・ケムペン大佐がその使節としてマクス大公の許へ参内したが、大公はジョセフが一面識もないヘレナと結婚することは喜ばなかった。のみならず彼女にはポルディ伯爵という愛人があり、この強制的な結婚から逃れるために、2人は手を採って駆け落ちもしかねない有様だった。だがやがて御婚約発表の日が来たけれど、母君は故意にマクス大公を招待しなかった。大公は憤然として妹娘のシシィを伴い、首都に乗り込みそこの宿舎に陣取って事の成り行きを注視していた。ヘレナ嬢が参内の日に心進まぬジョセフ大公は王宮からお姿を消した。そのころ街の宿舎で退屈したシシィは野辺を散歩するうち知らぬ間に王城の御苑に迷い込んでしまった。王宮を逃れたジョセフは彼女の姿に心引かれ共に摘み草に興じ自分の御身分を明かされた。大公を初めて知ったシシィはただセシリアという名前を告げて身分を秘したまま判れた。だがその夜彼女の思い出忘れがたくジョセフは旅宿を訪れ、若き大公の婚約を祝して開かれたカーニヴァルへ、彼女を伴って楽しい数時間を過ごし、ジョセフはついに王城へ帰らなかった。驚愕された母君はセシリアに捕縛命令を下し、彼女は暗い牢屋に投ぜられた。マクス大公は自ら乗り出して彼女を救い、この心進まぬ婚約を破棄しようとしたが、その時セシリアは思わぬ悲しみに心破れて王城の地を去った。ジョセフは彼女の後を追った。王城では待たしても大公が消え去ったので大騒ぎになっている頃、2人は思い出の旅宿で楽しい夢に酔っていた。そこへ現れたのはマクス大公である。貧しい農民の娘とのみ信じていたジョセフは、今初めて彼女の本身を知った。一切はマクス大公の計らいで順調に進むようになった。母君の顔にも満足なほほえみが見られた。そしてヘレナ嬢との婚約の宴はたちまちセシリア嬢とジョセフ大公との結婚披露の宴に変わって、王城を挙げて君万歳の歓声夜をこめて響いたのであった。