「嵐の孤児(1921)」のストーリー

暴逆なる貴族の呪の手は、フランスの人々を戦慄させた。時はルイ16世王の治世。世を挙げて人民の呪咀の声は巷に喧びすしく、何時にても機会だにあらば、憧れ求むる自由を得んため、恐しい革命は来ようとしていた。母の手から命助からんため離されて、雪の夜をノートル・ダム寺院の階の下にすてられた幼児ルイズは、情あるジラール夫妻に拾われて、赤貧洗うが如きうちを、彼らの愛児アンリエットとともに健かに成人した。夫妻なきあとアンリエットは、ルイズの母とも姉ともなって、殊に彼女が盲いてからは、あらん限りの情を込めて、慈愛の限りんをつくすのであった。都パリで名医にかかれば、ルイズの盲目は癒ろうと聞き、2人の孤児は生まれた村をあとに、遠路を馬車に揺られて、パリに着く。アンリエットの飾らぬ美しさを認めた一貴族は己が淫らなる犠牲とせんと、家来に命じて彼女を拐わかし、夜宴の席へ連れて来させた。ヴォードレーという若い医師は、アンリエットの危急を救って安全なる場所へと落ちつかせた。盲いたるルイズは姉が拐かされて後途方にくれるうち、フローカールという悪婆の手に陷ち、雪降る都大路を哀れなる歌唱って僅かの合力を乞う身となった。哀れ、2人の孤児は同じ都のほど近くに住みながら、相逢うことも得ず互いに身の上を案じつつ日を暮らしていった。自由の叫び高らかに叫んで、人民の首領株と立てられたダントンは一夜貴族の衛兵に追われ、傷ける身をアンリエットの隠家に運んで、優しい彼女の看護を受ける。革命の火蓋は切って放たれた。パリの全市湧くが如き混乱のうちに、バスティーユの牢獄は破られて、さしもに専横飽くなかりし貴族は昨日に変わる惨めな身の上となり、ギロチン台上の露と消ゆるもの、日に千をもって敷うる位。ヴォードレーも追われてアンリエットに囲まわれたが、発見されて捕らえられ、彼女も禁令を破って貴族を囲まったために同罪として、ロベスピエールが情もなき宣告に、死は2人の上に宣せられた。尋ねる姉に廻り逢った時、すでに姉は自由の体でなく、死を宣せられたと聞いたルイズは、盲いたる身を縛められた姉の体に投げて、幸薄き世の運命を泣いたのであった。アンリエットは刑場に引かれ行く。キラキラと輝くギロチンの刃は、彼女の頭の上に引き上げられた。この急を知ったダントンは、恩義報いんと畢世の大雄弁を揮って放免状を獲、刑場指して肥馬一鞭揉みに揉んで馳せつけた。天は未だアンリエットを見すてなかった。あまりの嬉しさに夢かと驚く彼女は、妹ルイズと相擁して、心から神に感謝の祈りを挙げたのであった。