「嵐(1930)」のストーリー

冬近い西部カナダのある集落。バー・ウィントン(ウィリアム・ボイド)は賭金5000ドルを日没まで調達出来ない場合には、自分の鉱山を手放さなければならない破目に陥っていた。この時、従軍時代の古い友達デーヴ・スチュワート(ポール・カヴァナー)が、都会から現金を揃えて彼を救いにやって来た。バーの窮境はかくて救われ、彼はデーヴの昔と変らぬ温かい友情に感謝した。そして2人の共同生活が始められた。ジャック・ファシャール(アルフォンズ・エティエ)は密輸入のかどで深林警察官に捕えられんとし、娘のマネット(ルーペ・ヴェレス)の機転で一旦は逃れたが、バーとデーヴの小屋に辿りついた時は大怪我を負っていて、間もなく息絶えた。父に先立たれ、ひとりぼっちとなったマネットは、デーヴたちの小屋に暮らすことになった。バーとデーヴの屈強な若者と、美しいマネットの生活に、当然三角関係が生まれる。朴訥で粗野な性格から異性に対して不慣れなバー、これに反して都育ちの女ずれしたデーヴ。親しい彼らの間にも、恋のために激しい反目が刻々に色濃くなってゆくのであった。そしてある嵐の夜、ついにこの三角関係の均衡は破れてしまった。マネットの寝室における烈しい格闘の後、デーヴはバーに組み敷かれた。その瞬間、マネットはバーに、デーヴの命乞いをする。彼女の言葉を聞いたバーの心に、正しい意識が蘇った。マネットの心を知った彼は潔く自分の愛を犠牲にしようと決心し、山谷を吹き荒れている吹雪の戸外に出て行った。マネット自身にも、初めて力強い異性への愛着がこの時起こった。それは、バーの男性的な行為から喚び起されたものである。彼女の苦悩を知ったデーヴは奮然と立ち、吹雪の山道にバーの跡を追った。そして嵐と雪崩のために危地にあるバーを救って、デーヴはマネットの元にバーを連れて戻って来た。やがて嵐が静まって朗らかな朝が訪れた時、デーヴは愛する2人の幸福を祈りながら、春まだ浅い森の路を都へ去って行くのだった。