「無防備」のストーリー

田園風景の中に、ポツンと佇むプラスチック工場。30代の主婦、律子(森谷文子)が、巨大な機械から生み出される欠陥品を仕分け、機械の調整をし、製品を運ぶ。そんな単調な作業を繰り返す毎日を律子は送っていた。家では夫・礼二(西本竜樹)との会話はほとんどなく、寝室を別にする冷え切った関係が続いている。ある日、お腹を大きく張り出した妊婦の千夏(今野早苗)が、定職に就けない夫・吾郎(朝真裕稀)を支えるために臨時パートとして工場に入社してくる。律子は千夏に工場の仕事を親身になって教え、そんな律子を千夏は姉のように慕うのだった。工場からのあぜ道を肩を並べて一緒に帰り、公園や浜辺で語らう律子と千夏。二人の間には、ほのかな絆が生まれつつあった。そして千夏との出会いが律子の心の殻を剥がし、徐々に変化を起こしていく。律子は、目一杯おしゃれをし、気合いを入れた手料理を作り、礼二との関係を修復しようと努力を重ねる。しかし、彼女の気持ちは届かず、礼二は相変わらず冷たい態度をとるだけであった。そんな中、千夏が吾郎と幸せそうに過ごす姿を垣間見た律子は、押し殺していた感情が沸々と噴出してくる。「あなたが普通にできることが、私にはできない……」。千夏の存在が律子の心を乱し始め、やがてその暗い闇が膨れ上がっていくのだった……。