「刺青 匂ひ月のごとく」のストーリー

藤堂ダンススタジオでは、藤堂葉月(井村空美)が、姉の藤堂陽花(さとう珠緒)とパートナーの月岡亮介(勝野洋輔)の練習風景を見つめている。陽花はソシアルダンスの名手だった亡き父母の後を継いでスタジオを経営しており、彼女自身も競技会で優勝するほどの腕前だった。一方の葉月はまだ大学生。古参の生徒・内海和音(今拓哉)に競技ダンスを勧められても、姉の才能に引け目を感じて愛想のない返事をする。華やかで外交的な陽花に対し、おとなしく内向的な性格の葉月は、自分は絶対に姉のようにはなれないと強いコンプレックスを感じていた。今の葉月の楽しみは、銀座画廊倶楽部という見知らぬ場所から送られてくるクリムトの絵のポストカードとつるし人形を部屋じゅうに飾ることだった。陽花は一方、葉月の中に眠る才能に気付いていたが、それを自ら認めることはできなかった。そんなある日、陽花は葉月に競技ダンスのパートナーとして滝田恵司(古河耕史)を紹介する。試しに踊ってみる二人だが、乗り気な滝田に対して、葉月はやはり断ってしまう。諦めきれない滝田は、神社の境内を一人で歩く葉月に近づき、パートナーを組むことを迫って彼女に襲いかかる。そこに偶然通りかかった亮介が葉月を救い、二人は互いを意識し急接近する。二人の関係に気付いた陽花は、葉月に亮介と踊らないように頼むが、亮介は陽花にペア解消を申し出る。絶望した陽花が夜の雨中を彷徨っていると、刺青の彫師・桐悟(鈴木一真)が現れ、陽花を海辺の自宅へと連れていく。陽花は桐悟を誘うが、その家には葉月の部屋にあったつるし人形が飾られていた。人形とクリムトの絵を葉月に送っていたのは桐悟だと悟った陽花は、桐悟が求めているのも葉月なのだと確信する。後日、陽花は葉月に届け物を依頼、用意された車で葉月が向かったのは桐悟の家だった。真っ赤に染まった匂い月の夜、桐悟は葉月の背に“鳳凰”の刺青を彫り始めた……。