「シュヴァリエの巴里っ子」のストーリー

富と好色でパリにその名を知られたカッシニ男爵は一夜、その美しい夫人ジュヌヴィエヴと取り巻きの紳士たちを引具して、フォーリイ・ベルジェルの桟敷に現れた。舞台ではこの劇場の人気者ウージャン・シャルリエがカッシニ男爵の物真似を演じていた。その真に迫った演技に感激した男爵は彼の楽屋を訪れようとして舞台裏でシャルリエの恋人でやきもち焼きの女優ミミにシャルリエと間違えられてしまった。元より色好みの男爵はミミに好奇心を感じ、その気を引いて見たが体よくはねつけられたので、彼女に自分の名刺を与えて気が変わったら訪ねてくるようにと約束した。このとき男爵は自分の全財産を注ぎ込んでいるアフリカの鉱山が財政的破綻に面しているとの電報を受け取ってその穴埋めに2千万ポンドを作る為に急いでロンドンに旅立っていった。所がその翌晩は男爵が首相を招待して宴会を開く予定になっていたので、そのとき迄に男爵が帰らぬときはあらぬ疑いがかかるのを恐れて友人はシャルリエをその替え玉に使うことにした。シャルリエがうまく男爵になりすますことが出来たのでその夜は誰も男爵の不在を知る者無く、しかもシャルリエは反古同様の男爵の鉱山を2千5百万ポンドで蔵相の手から政府に売りつける事に成功した。この土地はフランス領とポルトガル領の国境にあるので政府は軍備上是非これを買い取らねばならなかったのである。一方ミミはシャルリエが劇場を休んだのでてっきり彼の浮気と早合点し、自棄を起こした挙げ句、男爵を訪れたが、それがシャルリエであるのを知って一時は夫人との間を疑う。が実は莫大な謝礼を貰って自分たち2人の為に自動車を買う想定だと聞いて喜んだが、ミミがシャルリエは病気で欠勤しているのではないと劇場の支配人に告げたのでシャルリエを首にするといきまいてるのを思い出し、2人して男爵邸を抜け出し劇場へ駆けつけた。男爵はその夜ロンドンから急に帰ってきてシャルリエが自分の替え玉になっていた事を知り夫人の心を試そうとして何処までもシャルリエが扮した男爵を気取っているが、夫人はそれが本物の男爵である事を見抜いて接吻を許した。しかしその翌朝、前夜の男爵が本当の男爵ではなかったと言われ夫人は驚いたがやがてそれは男爵のトリックであった事が判って事件は円満に解決した。