「あなたを忘れない」のストーリー

東京の路上ライブを巡っていたイ・スヒョン(イ・テソン)は、一人の女性の歌声に足を止めた。声の持ち主は、ストリート・ミュージシャンの星野ユリ(マーキー)。スヒョンは25歳、故郷で兵役を終えた後、留学生として日本にやって来た。祖父と父が大阪に住んでいた縁もあり、大きな夢と出会えるような予感を日本に抱いていた。ユリは21歳、バイトをしながら音楽で成功することを夢見て、路上ライブを重ねていた。両親が離婚している。翌日もユリのライブに現れたスヒョン。ユリが歌を始めたきっかけは、争ってばかりいた両親が、彼女が歌うと笑ってくれたからだ。故郷でバンドを組み、ギターを弾いていたスヒョンが、留学生のパーティでユリの曲を演奏した。舞台に誘われて歌いだしたユリは、スヒョンの魂に自分と同じスピリットが流れていることを感じ取る。そんな中、ユリは名古屋でスヒョンと落ち合う。半年前に出て行ったきり電話もしていない母・史恵(原日出子)に会いに行くのだ。友人の五月(大谷直子)が経営する託児所で元気そうに働く母に、感謝の気持ちを素直に伝えるユリ。今度はスヒョンの祖父が暮らした大阪に向かう。それぞれの原点を訪ねるこの旅で、2人の友情は恋へと変わるのだった。だが、スヒョンの心を曇らせる事件が起きてしまう。マウンテンバイクに乗るスヒョンにタクシーが衝突したのだが、韓国人だとわかった途端にタクシーは逃げ、スヒョンが悪いかのように扱われたのだ。季節はちょうど年の暮れ、体も心も傷ついたスヒョンは故郷に帰ってしまう。新しい年。ユリの待つ東京に帰ってきたスヒョンは、再び希望に満ちていた。インディーズバンドの決勝大会で歌うことが決まったユリは、夢が叶う一歩手前まで来ていた。スヒョンがユリに贈った二つのプレゼント、ネックレスと、ユリのために書いた新曲。それが最初で最後の贈り物になるとは、その時、二人は思いもしなかった……。