「ウール100%」のストーリー

大きな屋敷に何十年もの間、二人っきりで住んでいる双子の老女、梅(岸田今日子)と亀(吉行和子)。屋敷の中は、庭や屋根の上までごみで埋め尽くされていた。二人は毎日ごみ置き場を歩き回っては、気に入ったごみを持ち帰り、屋敷は完全なゴミ屋敷となってしまった。二人はごみを“ヒロイモノ”と呼び、宝物のように大切にしていた。ある日、いつものようにヒロイモノ集めに精を出していた二人は、目も覚めるような真っ赤な毛糸玉を見つける。それを持ち帰った夜、その赤い毛糸玉を手繰って、少女(北浦愛)が屋敷に迷い込んで来た。少女は二人が拾ってきた毛糸玉を手にとり、あっという間にセーターを編み上げる。そして自らセーターを着込み、編み目を念入りにチェックし、納得できないところを見つけると頭を抱えて「あみなおしじゃ~!!」と叫ぶ。その人間離れした声量は、屋敷を揺らすほどの大きさで、耳をふさがずにいられない。少女は叫んだ後、セーターを着たまま裾からほどき、また黙々とセーターを編み直し始める。二人は少女にアミナオシと名付け、アミナオシはその日からなぜか屋敷に居ついてしまう。セーターを編んでは「あみなおしじゃ~」と大きな声で叫び、また編み直すアミナオシ。最初は迷惑がっていた二人だが、次第に少女のことが気になってくる。やがてアミナオシは、二人の大事なヒロイモノを次々と壊し始めてゆく。やがて二人は過去を思い出す。愛する母が少女だった自分たちを置いて出て行ってしまい、初恋の男性に想いを告げられずに別れてしまった過去を、二人は思い返す。梅と亀は屋敷中のヒロイモノを処分することに決め、全てのヒロイモノを捨てると、アミナオシもまた消えていった。そして二人は住みなれた屋敷を出て、旅に出るのだった。