「四月」のストーリー

街を歩く彼女(タニア・チャントゥリア)のあとを、追いかける彼(ギア・チラカーゼ)。時折視線を交わしながら、お互いをじらすように速度をはやめたり、遠回りしたり、かくれんぼしたり。二人は目と目を合わせるだけで心が通じあう仲のよいカップルだ。彼らは水道、電気、ガスがあるだけの殺風景なアパートの一室で新生活を始めた。ある日、管理人の男がやってきて、何も持たない二人のために椅子をプレゼントし、部屋に鍵をかけることを提案する。それをきっかけに、二人はいろんなものを部屋に持ちこみはじめる。テーブルを買い、それからベッド、テレビに鏡台…。部屋にものが増え、身なりがよくなっていくにつれドアにかける南京錠も増えていくが、それと反比例して、彼らが寄り添うためのスペースはどんどん失われていく。以前のように寄り添ったり、見つめあうことをしなくなった二人の心は徐々にすれ違う。ある日二人は、かつてのように街中を追いかけっこし、手をつなぎ見つめあって仲直りをする。アパートに帰ると、二人は部屋中を埋め尽くした家具や電化製品を次々と窓から放り投げるのだった。