「完全なる飼育 秘密の地下室」のストーリー

雨の降る公園。女子高生の梨里は、金の工面が出来なかったことで恋人に殴られていた。そのまま捨てられ、ボロボロになった彼女はゴミ捨て場に倒れ込む。やがて、物陰から男が現われ、傷だらけの梨里を担ぎ上げてその場を去っていく。その男・タケルは過去のトラウマから言葉と記憶の一部を失っていた。彼が連れて帰った洋館の屋根裏部屋で目を覚ます梨里。下着姿の彼女は自分が監禁されたと悟り、すぐさま脱走を試みるが、傷の痛みで身動き出来ない状態にあった。梨里を監禁した男、タケルは口が利けないようで、他人に話しかける時は小型ワープロを使って画面に文字を打ち出す。梨里は結び合わせたシーツをロープ代わりにして屋根裏部屋から垂らし逃亡を企てるが、タケルに見つかり力づくで連れ戻されてしまった。しかし監禁しておきながら、タケルは梨里のために精一杯の気づかいを見せた。「もう逃げないから、縛らないで」と梨里が懇願すると、タケルは縛ることを止めた。ある日、タケルが扉に鍵を掛けて出かけたのを見計らい、梨里は体当たりで部屋の扉を壊した。足音を忍ばせ一階まで下り、玄関の手前まで辿り着いた時、開け放された居間に自分の制服が畳んであるのを見つける。さらに、好奇心から部屋の中を探ってみると、女ものの着物や、ホームレス姿のタケルが写った写真などが出てくる。そして、テーブルの上に置かれた一冊の入院案内書。そこには、「三杉隆子」と患者の名前が表記されていた。そこへ、タケルが帰ってきた。梨里は慌てて屋根裏部屋へ戻ろうと階段を駆け上がるが、足がもつれて階段を転がり落ちてしまう。物音に驚いたタケルが駆けつけると、梨里は足首を押さえて痛みに苦しんでいた。傷の具合を看ようとタケルが梨里の足に手をのばした時、その手が小刻みに震えだす。激しい頭痛と呼吸困難。タケルの脳裏には、長い髪をなびかせるひとりの少女の幻影が浮かんでいた。タケルは声にならない叫びをあげ、胎児のようにひざを抱えておびえ続けた…。それ以来、梨里の心の中に、タケルに対する複雑な想いが生まれ始めていた。自分を監禁しておきながら、優しく接し、時には避けるような素振りさえ見せるタケルに興味が湧いてきたのだ。とうとう梨里はタケルに問いただす。「隆子さんて、だれ?」「どうして私を監禁するの?」。梨里の真剣な表情に押され、タケルはワープロに文字を打ち込んだ。“君はいつも殴られていた”“君を助けたかった、話がしたかった”。その夜、梨里は風呂上がりの身体にバズローブをまといタケルの前に立つ。タケルの震える手が伸び、梨里の白い胸に触れようとしたとき、再びタケルの頭を激しい痛みが襲う。長い髪が風に揺れ、幸せそうに微笑む少女…。タケルは身を丸め、真っ青な顔で苦しみだした。梨里には触れようとすると、記憶が、失われた5年前の記憶がフラッシュバックして、堪え難い苦痛に襲われるのだった。梨里はある決意をする。“隆子”と会って、タケルの過去の記憶を取り戻す方法を探るのだ。それには、すべてが封印された、禁断の地下室への扉を開けなければならなかった……