「跫音」のストーリー

ニュー・イングランド州の静かな町グルースポートに、ハイラム・スカダー(タイロン・パワー)という盲目の靴直し屋があった。彼には、足音によってその人が誰であるか判別する力があった。息子のトムはペギー(エステル・テイラー)という娘と恋仲であったが、ペギーはトムが職を得て独立するまでは結婚しないと言って、トムに都に出ることを勧めていた。しかし年老いた盲目の父に、そばを離れてくれるなと頼まれると、トムはペギーの激励を実行する訳にもいかなかった。ペギーはトムに奮発心を起こさせるため、スカダーの家の2階を借りている土木技師のアレック・キャンベルに心変わりした風に装い、若いトムの心は嫉妬に燃える。ある日、トムはキャンベルと火の出る様な喧嘩をして、殺されてしまう。キャンベルはトムの死骸のそばに、自分の頭文字を彫った時計を置き、部下に支払うべき金を入れた鞄を煉瓦壁の奥に隠して姿を消す。息子の仇を討とうと盲目のスカダーは、キャンベルの帰りをひたすら待つ。鞄を取り出しにいつかキャンベルが帰ってくるであろうことを、固く信じていたのである。3年過ぎたある日のこと、待ちに待った跫音が聞こえて来た。物凄い格闘、ついにスカダーは、憎くき仇の命を奪ったのだった。