「ほとけ」のストーリー

古い港町・臥牛市。怒りや悲しみといった表情を表すことがないことから、地元のワルたちにホトケと渾名されているライは、リヤカーで拾い集めた鉄屑で仏像を作っている。「いつかその仏像に魂が宿った時、この汚れきった世界を破壊してくれる」そう信じ続けながら。そんな彼が想いを寄せているのが、船員会館でマッサージ師として働く全盲のユマだ。だが、彼女が慕っていたのは、ライの兄でごろつきのシバだった。ライは、彼女の気持ちを知りながら平気で弄ぶシバが許せない。しかし、彼の愛は「強い人が好き」と言うユマに届くことはなかった。ある日、ユマが実は目が見えるようになっていたことを知ったライは、シバを海に突き落とす。これでユマの気持ちは自分に向けられる筈だ。ところが、ユマは九死に一生を得たものの廃人になってしまったシバを愛し続けた。焦燥感から暴走を始めるライ。彼は自分の力をユマに示す為、シバのライヴァルであったムジを殺す。一方その頃、幼い頃から義父の性的虐待とそれを容認していた母の呪縛から逃れる為にふたりを殺害したユマは、シバを殺し、自らも命を落としていた。どうやっても届かなかったユマへの愛。ライは、ふたりの亡骸をリヤカーに乗せ歩き出す。