「落下する夕方」のストーリー

ある日、リカは4年間一緒に暮らしていた健吾に別れを告げられた。彼は、不思議な魅力を持つ根津華子という女性に心を奪われたのだと言う。あまりに突然なことに戸惑うリカ。健吾の先輩・柴田のパラグライダー事故に加担してしまったのではないかという気がかりを除いては、何もかも順調だと思っていたのに……。それから暫くして健吾はマンションを出ていったが、いつまでも別れを受け入れられないリカは、いつか健吾が戻ることを信じ部屋に留まることにする。しかし、2LDKの部屋はひとり暮らしには広いばかりか、今の給料では家賃を捻出するのは大変だった。そんな矢先、華子がリカの部屋にやって来た。「3人にとって完璧な解決策だと思うけど」そう言ってルームメイトを決め込む華子。理解不可能な行動を示す華子に、しかしリカは追い出すことを心のどこかで躊躇った。華子がいれば、健吾がこの部屋に顔を出すからだ。こうして、リカと華子の奇妙な共同生活が始まった。一日中寝ているかと思えば、ふらりと出ていったきり何日も帰ってこない華子。リカは感情のままに振る舞う華子を羨ましく思いながら、その一方で彼女に振り回され疲れ切っていく健吾を心配に思っていた。そんな健吾を見かねた彼女は、彼をベッドに押し倒してしまう。しかしそれは、ふたりの隙間を埋めることにはならなかった。ある日、華子がリカを湘南に誘った。華子が幼い頃に暮らしたという家を訪れるふたり。そこでリカは、華子が幼い頃、弟を半身麻痺の体にしてしまった辛い過去の話を聞く。一足先に東京へ戻ったリカ。夜、彼女は健吾を誘って3人でスキヤキをしようと華子の帰りを待つ。しかし、華子は二度と戻っては来なかったのである…。華子の葬式を済ませたリカは、健吾と華子の父親・中島の3人で生前の彼女の想い出に浸った。そうして初めて華子の死と向き合うことの出来たリカは、その後、それまで訪れることを躊躇っていた柴田の家を見舞い、更に健吾との部屋から引っ越すことも決意するのだった。