「鯨の中のジョナ」のストーリー

1942年、アムステルダム。4歳になるジョナ(ルーク・ペターソン)は、父マックス(ジャン=ユーグ・アングラード)、母アンナ(ジュリエット・オウブリィ)の愛に包まれ、幸せに暮らしていた。だが、ナチスの台頭とホロコースト渦は、ユダヤ人である彼らの運命を次第に不幸へと追い込んでいく。ある日突然、商店は食料の販売を拒否し、服の胸部にはユダヤ人を示す『星』の紋章が縫い付けられ、幼いジョナまでが見知らぬ者から「汚いユダヤ!」と罵られる。そしてその日が来た。ナチスの兵隊によって、アムステルダムのユダヤ人たちは連行され、ベルゲン・ベルゼンの強制収容所へ送り込まれたのだ。やがて3年が過ぎ、ジョナは7歳(ジョネー・デル・ヴェッチオ)になっていた。強制労働と虐待の日々は絶え間なく続いたが、ハンナは「いつも空を見上げて。人を憎んじゃだめよ」と、ジョナを励ますのだった。だが、父マックスは死に、ジョナは徐々に無口に、心を閉ざしていった。ある日ユダヤ人たちは次の収容所へ移動するが、その先には恐らく確実に、死が待っていた。彼らを絶望が覆うが、僥倖が起こった。輸送列車をソ連軍が急襲、事態は一転、ユダヤ人たちは解放されたのだ。ジョナたち親子にも、再び自由で幸福な日々が訪れるはずだったが、病院に入院したハンナが死を迎える。アムステルダムに住むマックスの友人ダニエル夫妻がジョナを引き取るが、ジョナの心は冷たく閉ざされたままだった。困惑する夫婦。そしれそれは、ある朝のことだった。ジョナの眼前に、父マックスの幻が現れたのだ。驚くジョナに、まるでいつも見守っていると言いたげなように、優しく微笑むマックス。ジョナもまた、生きる勇気と希望を、忘れていた笑顔を取り戻すのだった。