「哭きの竜」のストーリー

関東一円を取り仕切る広域暴力団・桜道会系の甲斐組組長・甲斐正三は、ある一人の男を執拗に欲していた。牌に命を刻み込むように哭き、神憑かり的な運の強さと不敗の伝説を持つ雀士“哭きの竜”。最近台頭してきた暴力団・美好組との対決を間近に控えた甲斐は、竜の持つ魔性の強運に惚れこみ、“哭きの竜”を桜道会の守り神にしようと考えていたのである。竜が死んだという噂を聞いた甲斐は、雀荘でチンピラに絡まれていた竜を発見して安心するが、竜は甲斐の誘いを一向に聞き入れない。甲斐の舎弟・権藤が美好組のチンピラに刺し殺されたのをきっかけに、甲斐組と美好組の抗争は激化していった。竜には、身も心も捧げてひたすら竜の帰りだけを待っている夏枝という女がいた。夏枝に恋心を抱くテツというチンピラは、竜を消すために大阪ヤクザ・海藤組から放たれたヒットマンだったが、竜を殺すのに失敗してから、夏枝を思うあまり竜に付きまとっていた。テツは夏枝を自由にしてやってくれと竜に懇願するが、竜は我れ関せずとばかりにそっけない態度を取る。一方、無差別の殺し合いに発展した甲斐と美好の抗争は、桜道会会長の桜田が間に入って手打ちの準備が進められていたが、テツを追ってきた海藤組の鬼塚が美好組の後押しについたことから、さらに激しさを増すこととなった。鬼塚はテツに新たな仕事を命じ、甲斐の命を狙ったテツの弾はわずかに逸れ、甲斐は一命をとりとめる。その頃、美好組の代打ちとの勝負に勝った竜は、組長の美好と麻雀を打つ機会を得ていた。竜を追って美好の隠れ家に乗り込んで来た甲斐は、怪我をおして自らの手で美好を射殺する。美好との抗争にピリオドを打ち、なんとしても竜を自分のものにしたいという思いをさらに強めた甲斐は、命を賭けた勝負に竜を誘い出す。竜の手はあまりふるわず、甲斐が快調に先行したが、竜は次第にアガリを重ね、最後の局で逆転の手をモノにした。竜は、約束どおり命をとれという甲斐を相手にせず立ち去ろうとする。しかし、そこへテツが現れ甲斐に銃弾を浴びせた。甲斐は倒れ、テツも組員たちに射殺されるが、竜は何も言わずその場から消え去った。雀荘の前で待っていた夏枝にも構わず、竜は朝もやの街にただ黙って消えていくのだった。