「軍法会議(1956)」のストーリー

第一次大戦で赫々たる戦績を残し空の英雄と謳われた陸軍航空部隊のビリー・ミッチェル将軍(ゲイリー・クーパー)は戦後も常に空軍万能論を説いた。そのため舌禍問題を起こし、筆舌は遂に海軍のみならず陸軍にまで大きな刺激を与え陸軍条令第96条に違反するものとして告発され、統帥権侵害で軍事裁判に付されることになる。それは1925年のこと、少将から大佐に降等された彼はワシントンでの軍法会議にまわされる途次、親友ランスダウンが、海軍の飛行船シェナンドア号の爆発で殉職した恨みを述べずに先ず未亡人マーガレットを訪ねる。陸海軍クラブで弁護士のハーバート・ホワイト大佐に会う。そして法廷では彼は無罪を主張し、空軍力の拡充こそ国力増大の基礎であることを力説する。だが当局のやり方は非道だった。軍は出来るだけこの公判を秘密裡に運ぼうと法廷を薄暗い倉庫の一室に選んだ。万事出足からこのような調子でミッチェルにとって、絶望の影がつきまとっているかに見えた。彼は友人の下院議員フランク・リード(ラルフ・ベラミー)を民間側の弁護士に依頼した。リードは裁判長ガスリー将軍(チャールズ・ビッグフォード)がミッチェルに偏見を持っていることを指摘し、将軍はそのため、並いる判事に自分の適否を投票で決定させることになる。話は遡る――第一次大戦のジェットランド沖海戦の、ドイツ戦艦オストフリースランド号爆撃のとき、軍の上層部が一笑に附したが、2回目の爆撃で戦艦を撃沈する。だがミッチェルはこの功績にも拘らず下院は航空隊の増額を承認しないばかりか、軍の上層部を刺激したため少将から大佐に降等されてしまう。ミッチェルはワシントンに向かい軍の上層部を説いて廻るが、ききいれない。ミッチェルは親友のランスダウン海軍大佐を尋ね、飛行船シェナンドア号でデトロイト迄飛行せよと命じられたと聞かされる。ランスダウンはこの飛行船が安全でないから中止するよう当局と論争した後なのだ。やがてテキサスに帰ったミッチェルは飛行船が爆発し、全員が殉職したことを知る。ミッチェルが軍法会議も辞せずと新聞記者を集めて、この事件は陸軍当局の無能の故だと発表する――ここで再び画面は法廷にもどる。ガスリー将軍は裁判長として適格と認められ遂に世論を沸騰させたこの事件も有罪の判決が下され、5年間の服務停止ということで落着する。一旦裁決が下るとミッチェルは何の不服の態度も顔に現さずに、ガスリー将軍に握手を求め、平服に着換えると凛然と法廷を去った。