「急にたどりついてしまう」のストーリー

「1・この町で、夢のかたすみで」東京の西の郊外の小さな町。ソーセージ屋の工場で働く信次がこの町に来て二年になる。趣味は歩くこと。工場では孤児として育った正夫に慕われ、アパートには素姓の知れぬ衆木という男が居候している。ある日、信次が部屋に帰ると、衆木とこの町を出る約束をしているという女の子・リサがいた。二人は名前の告白ゲームをして衆木の連絡を待ち、深夜に待ち合わせ場所に行くが、いったん衆木の車に乗り込んだリサは結局この町に残ることになる。数日後、信次は飲み屋でリサと再会し、酔ったリサは一人暮らしの身の上を語った。その頃、リサの幼なじみで立川ピストルズというグループのリーダーだったテルオが町に戻ってくる。 「2・目をさましてからも」散歩していた信次は、テルオに悪戯されかけたリサと出くわす。その夜、二人は信次のアパートとリサの家を行ったり来たりした末に身体の関係を持った。リサの家に泊まった信次は、翌日仕事をサボってリサと一緒に一日を過ごす。テルオは信次の存在を知って苛立ちを募らせ、リサはテルオに失望していた。落ち着かないリサは信次にも突っかかり、心をすれ違ったままにして信次はリサの家を出て行く。 「3・理由はそれだけではないが」ミスをした正夫を叱る先輩の田村と言い合いをした信次は、工場を飛び出した。飲み屋にいるとテルオがやって来て挑発する。それから何日か、信次は仕事に行かず町を歩き回っていた。久しぶりに姿を現わした父親とベンチで話をし、その後、正夫が居所のわかった姉の舞踏公演に行くのについていき、二人の対面の場面に立ち会う。一方、リサの家にはイギリスから母親が戻っており、母親は宗教詩でリサを諫めていた。 「4・急にたどりついてしまう」リサが夜の通りを歩いている信次を見つけ、二人は口づけを交わす。信次がリサの家に招かれた夜にリサの母親は倒れ、リサは働くことになった。仲間のカッチンに反抗され孤立したテルオは、金をゆすろうとした男と揉み合ううちにナイフで刺してしまう。テルオは遠くへ逃げる前にリサに会いに来た。テルオの車を見送ったリサと信次は、次の章に向かって歩き出している。