「汚い奴」のストーリー

かつては東洋ウエルター級新人王として活躍し、世界を狙えるプロボクサーとして将来を嘱望されていた高須五郎は、八百長事件に巻き込まれ、ボクシング界を永久追放となった。今では新宿を根城に、表向きは興信所となっているが、裏では訳ありの人間たちを巧妙にゆする、恐喝のプロフェッショナルとして生きている。五郎は、相棒である森山が集めてくる情報を元にゆすりをかけ、狙った相手をとことん追い詰めるその手口から、憎悪と軽蔑を込めて“汚い奴”と人々から呼ばれていた。五郎が狙うのは、轢き逃げ事故を起こした暴力団幹部とその情婦、小遣い稼ぎで売春している女子大生、同級生からカツアゲしている中学生など様々だった。五郎には知的障害を持つ妹の慶子がおり、慶子との水辺でのバードウオッチングだけが、五郎の唯一の安らぎだった。そんなある日、慶子はいつもの水辺でひとりの男・王双五と出会う。不思議な魅力を持った男に慶子は心を許し、妹を他人とかかわらせたくなかった五郎も、そんな慶子の楽しそうな表情を見て、男のことを認めるのだった。そのころ、五郎がゆすりをかけた轢き逃げの暴力団幹部が、香港ルートの情報を横流ししていたのがばれて組織に消された。五郎は、今度はそれをネタに組織のボスにゆすりをかけ、一億円を要求する。しかし、反対に慶子をヤクザにさらわれてしまうのだった。水辺で知り合った謎の男・王が、実はボスの命を狙っているヒットマンであることを知った五郎は、妹を助けにいくのを手伝ってくれれば、その場でボスを撃つチャンスをやると取り引きを持ちかける。慶子を助け出すために組織に乗り込んでいった五郎を、危機一髪のところで救ったのは、王の放った銃弾だった。慶子は無事に助かり、王も自らの目的を果たした。五郎を追っていた警察の目も組織に向き、すべては落ち着きを取り戻すのだった。