「くまちゃん」のストーリー

前衛彫刻家の石堂昭雄が製作に熱中している時夜空から卵形のカプセルが落ちて来た。その中から出て来たのは、ぬいぐるみのくまそっくりの宇宙人“くまちゃん”。くまちゃんは昭雄の言語中枢をコピーして、彼の本音をズバズバと彼そっくりに話す。昭雄には二〇歳も年下の劇団員の恋人・中尾桂がいたが、離婚経験のある昭雄は女性を愛することにとても臆病になっており、どうしても彼女に肝心な一言が言えない。彼はくまちゃんを悩める自分の妄想の産物と思っていたが、いつしかくまちゃんは彼の良き相談相手となり、彼の虚栄心も次第にほぐれていく。その頃、くまちゃんを密入国者と勘違いした警視庁の斉藤刑事たちの捜査が始まり、また昭雄の前妻だった弘美はくまちゃんをマネージメントしてひと儲けしようと、TVスタッフとともに追いかけていた。やがて、桂の劇団の芝居の幕が開いた。そのクライマックス、桂扮する少女の台詞に『そんな考えは間違っている!』と昭雄の声が場内に轟く。その声は実はくまちゃんが発したものだったのだが、そのまま昭雄は芝居を続けるかのように桂と会話を始めた。いたたまれず舞台を走り去る桂を追いかけ、昭雄はついに愛を告白した。くまちゃんの役割は終わり、一年と十三日後、昭雄と桂の間には可愛い赤ん坊が生まれていた。一方、くまちゃんは次なる悩める中年男、斉藤刑事にまとわりついていた。