「透明人間現わる」のストーリー

中里化学研究所の中里博士は凡ゆる物体を、人間をも透明にする薬品を発明し、その還元薬を未だ完成せぬある日、行方不明になった、その愛弟子瀬木と黒川は共に博士の令嬢真知子を結婚の相手にと望む競争相手だったが、博士の失そう後続いて黒川が行方知れずになるそれから幾何もなく宝石商天宝堂に透明の身体を持った怪賊が現れ時価八百万円といわれる名ダイヤ「アムールの涙」を奪わんとして果さず、二度目にはそのダイヤの持主長曽我部君子とその友人でレヴューの花形女優水城龍子--それは黒川の妹だった--の居室を襲って遂に君子の執事畑中を殺してしまうが龍子の機転でダイヤは再び救われる。次々と起る凶悪事件の犯人透明人間の正体が失そう中の中里博士であるといううわさが広まって行く時、そんなことはないと固く信ずる真知子と今は彼女と互いに愛し合うようになった瀬木の二人は協力して警察と共に真相を知るべく努力していたが中里研究の附属しているカワベ薬品会社社長河辺の正体に疑惑を持ち始めた、その疑惑が決定的となったある日、真知子は龍子から預った問題のダイヤを持ったまま父からの電話と偽られて河辺に自動車で連れ出される、それを追って疾走する無人の(透明人間が運転する)オートバイ、さらに彼らを追跡する武装警官隊、ダイヤはもとより命まで奪われそうになった真知子は危い所で助けられ、河辺は透明人間の為に射殺され、その透明人間はまた警官隊の弾丸に倒れて妹龍子の腕に抱かれて息絶えるのだった、博士の発明を知った河辺は博士を監禁し、ダイヤを奪うために博士の依頼だと偽わって黒川に透明薬を飲まし、実際には完成されていない還元薬を代償に与えるといっては彼に悪事を強いて来たのだった、悪用された科学の恐るべき害毒の犠牲となって黒川は殺人の罪までおかし最後には命をも失ったのである。