「黒船」のストーリー

タウンゼンド・ハリス(ジョン・ウェイン)が初の日本総領事として通辞のヒュースケン(サム・ジャッフェ)と黒船サン・ファシント号で下田に着いたのは1856年8月だった。時の下田奉行田村左衛門守(山村聰)はハリスらの上陸を拒んだので、ハリスはペリーの神奈川条約を楯に強引に上陸したため、田村は一行を寺に軟禁した。ハリスたちは村人から冷眼視された。ハリスは田村に善処方を申し込み、大統領の信任状を将軍に送ってもらいたいといった。その頃、幕府では尊皇攘夷を唱える者と開国を唱える二派の論争が絶えなかった。ハリスが上陸して半年ほど経ち、江戸表からハリスを厚遇せよという命令が来た。そこで田村は、ハリスとヒュースケンを茶屋に招き、美しい芸者お吉(安藤永子)に酒席に侍らせ、お吉をスパイとしてハリスの宿舎に住み込ませた。村人の悪意は募る一方で、お吉はハリスの妾と呼ばれた。幕府の態度はいっこうに決まらなかった。ある日、本国から船が来た。この船にコレラ患者が発生し、ハリスは直ちに船の退去を命じた。しかし、船員の1人が上陸したために、下田にコレラが蔓延した。ハリスは責任を感じ、いろいろと努力したが、無知な村民の憎しみは増すばかり、遂に田村は禁足を命じ、次の船で帰国させることにした。やがてハリスのお陰で疫病はおさまり、村民から感謝され田村も将軍に会わせることを約した。将軍家定に会ったハリスは、重臣たちに通商条約を結べと力説した。老中堀田らの賛成者もかなり出たが反対派の策動のため、一行は下田に戻った。田村は主君の命でハリスの暗殺を命じられた。しかしお吉が身代りになろうとして失敗し、田村は自刃した。お吉はハリスの元を去った。ハリスが条約調印のため江戸へ向かう日、晴れの行列を見送る人の中に、涙を浮かべたお吉の姿がみえた。