「悪魔スヴェンガリ」のストーリー

スヴェンガリというのは、ゲッコという手下のヴァイオリン弾きとパリのラテン街に住む貧乏な一音楽教授であるが生来彼は人を魅する不思議な魔力と残忍性とを備えている男であった。弟子の1人でオノリという女がスヴェンガリの魔力にひかれ、彼と暮らしたい一心から良人を捨てて来た時など彼は女に一銭の蓄えもないことを知るや直ちに追い出してしまったほどである。ある時、近くの下宿にタフィ、ビリーなど若い画家たちを尋ねた折りスヴェンガリはモデルを志願する可憐な娘のトリルビーに合った。その後、唄の好きな彼女が頭痛になやんでいるのを催眠術で癒してやってからスヴェンガリはトリルビーを自分の意のままに動く被催眠者にしてしまった。そして夜な夜な彼女はスヴェンガリの暗示を受けて彼の宿へ引き寄せられるのであった。こうする内にトリルビーはビリーと恋仲となったが1日自分が裸体でモデル台にたっているのをビリーに見つけられ恥かしさの余り戸外に走り去った。その純真さに打たれたビリーは彼女と結婚するべく決心をしたが時既に遅く彼の下宿の机には彼女からの別れの手紙が発見された。そこで彼は恋人の行方を八方たずねたが彼の元へもたらされたものは河岸に脱ぎ捨てられてあったという彼女の衣類だけであった。トリルビーは自殺したとしか思えなかった。ある夜こっそりパリの停車場から彼女を連れて旅に出るスヴェンガリに気がついたものは1人もいなかった。5、6年の月日がすぎてパリに再び帰って来たスヴェンガリは音楽会を開いた。昔馴染みの懐かしさからビリーはタフィ等を相伴って小屋に押しかけ演奏の終了後、楽屋口でスヴェンガリを待っていると意外や彼の後ろから死んだ筈のトリルビーが現れた。この時、驚きの余りスヴェンガリが気を失いかけたため魔力を解かれたトリルビーはビリーたちの所へかけよって来た。だがスヴェンガリが間もなく正気づくと同時に彼女の精神状態は朦朧となり再び彼らから離れ去った。トリルビーの占有を害されたくないスヴェンガリはすべての音楽会を断り、パリを去って行った。スヴェンガリはその後めっきり弱ってきたために、さしもの魔力も日一日と微弱なものとなって行った。トリルビーが田舎街のコーヒー店で唄っていると、ずっと彼女を探し続けていたビリーが偶然そこに来合わせた。スヴェンガリはこの上はトリルビーに自分たち2人の何方かを選ばせようと申し出たが、この時積もる身心の打撃に彼の気息は萎えていた。ビリーはトリルビーが再び自分の手に近く帰ることを悦んだ。しかしトリルビーはいつまで立っても意識を取り戻さなかった。彼女が己が魔力に封じられ、永久に他の男の手に渡らぬことを知るとともにスヴェンガリは満足の笑みを洩らして死んでいくのであった。

今日は映画何の日?

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