「希望の船」のストーリー

波静かなチェサビーク湾に面した漁村に牡蛎の採取を業としているタルボットと呼ぶ一家があった。初代タルボットはこの界隈の草分けで代々名士を出したが今は零落して親爺は飲んだくれ、4人の息子の内3人は怠け者で毎日のらくらしていたが、三男のムリガンは中々勤勉家で家業はもちろん家事万端1人で切り廻していた。村一番の金満家マーシャルはタルボット一家を蔑すみ卑しんでいたが娘のアンナ・リーだけはムリガンを愛していた。ところがある日突然彼がアンナ・リーに接吻したので彼女は怒って彼をやくざ者と罵った。ムリガンは以来家運挽回の決心を益々固くし、父親が泥酔して卒倒して死んだ後、3人の兄弟達に強意見を加えて各々専門の教育を受けるように仕向け、自らは亡き母の父が富裕であるのを頼ってヴァージニアまで学資調達に赴いたが祖父は死んでしまっていた。兄弟達に約束した手前ムリガンは止むを得ず船を専門に夜盗を働いて学資として送った。6年の歳月は流れた。ムリガンは夜盗と牡蛎採取業を続けたのでやくざ者だった3人も大学を卒業して夫々牧師と弁護士と医者になった。一方アンナ・リーはムリガンとの仲を割かれヨーロッパ遊学にやられたが、彼女のムリガンに対する愛は少しも変わらず、タルボット3人兄弟が大学卒業と前後して帰郷し、ムリガンがかつての約束を守って独力で理想の船を造っているのを見て歓んだがその船は既にムリガンのものではなかった。今迄盗んだ金を全部被害者に返すために彼は船を売ったのだったが、金を返したため足がついてムリガンは捕らえられた。公判の前日アンナ・リーは3人兄弟を電報で呼び寄せムリガンの犯罪の真相を物語った。兄弟達は法廷に立ってアンナ・リーと共にムリガンを弁護した。裁判の結果ムリガンは刑の執行猶予を与えられ幸福の日を迎えた。