「ゴジラ(1954)」のストーリー

太平洋の北緯二十四度、東経百四十一度の地点で、次々と船舶が原因不明の沈没をした。新聞記者萩原は遭難地点に近い大戸島へヘリコプターで飛んだ。島では奇蹟的に一人だけ生残った政治が、海から出た巨大な怪物に火を吐きかけられて沈んだというが、誰一人信じない。只一人の老漁夫は昔からの云い伝えを信じ、近頃の不漁もその怪物が魚類を食い荒すせいだという。海中に食物がなくなれば、怪物は陸へ上って家畜や人間まで食べると伝えられている。萩原は信じなかったが、暴風雨の夜、果して怪物は島を襲って人家を破壊し、政治と母も一瞬に踏み潰された。国会は大戸島の被害と原因を確かめる調査団を派遣した。古生物学者山根博士を先頭に、その娘で助手の恵美子、彼女の恋人サルベージ会社の尾形、原子物理学の田畑博士に萩原と政治の弟新吉も加った。そして調査団は伝説の怪物が、悠々と巨大な姿を海中に没するのを見た。帰国した山根博士は二百万年前の海棲爬虫類から陸上獣類に進化する過程の生物ゴジラが、海底の洞窟にひそんで現代まで生存していたが、度々の水爆実験に生活環境を破壊されて移動し、而も水爆の放射能を蓄積して火を吐くのだと説明した。フリゲート艦が出動して爆雷を投下したが何の効果もなく、ゴジラは復讐するかの如く海上遥かに浮上り、東京に向って進んだ。直ちに対策本部が設けられた。山根博士の弟子芹沢は、恵美子を恋していたが戦争で傷けられて醜い顔になったのを恥じ、実験室にこもって研究を続けていた。ゴジラは東京に上陸し、品川駅を押し倒し、列車を引きちぎり、鉄橋を壊して海中へ去った。本部では海岸に五万ボルトの鉄条網をはり、都民は疎開を始めた。ゴジラは再び上陸し、鉄条網を寸断し戦車や重砲の攻撃を物ともせず、議事堂やテレビ塔を破壊し、一夜にして東京は惨澹たる街となった。芹沢の秘密の研究を知る恵美子は、それを尾形に打明けた。水中の酸素を一瞬に破壊して生物を窒息させる恐るべき発明である。現代の人間を信じない芹沢はこれが殺人武器に用いられることを恐れて資料を火に投じ、ただ一個の機械を持って自ら海中に身を没した。船上の人々は目のあたりゴジラの断末魔を見た。そして秘かな恋をすてて死んだ芹沢の為に黙祷を捧げた。