「狐の王子」のストーリー

16世紀初頭のイタリアは群雄割拠の戦国時代の観があった。ローマの城主シイザー・ボルジアはイタリア統一の野望をもち、まずヴェニスへの進撃路に当たるフェララの城主と婚姻政策により和をむすび、次いでチッタ・デル・モンテを味方に引き入れるため、弁舌と機略に秀でた青年アンドレア・オッシニを使者に立てた。要害堅固なチッタ・デル・モンテの城は領主ヴァラノ公とその若い妻カミラの統率宜しきを得、難攻不落を謳われていた。オッシニの使命は内部からこの城の防備をきり崩すことにあったが、彼は老ヴァラノの高潔な人格に傾倒するようになり、さらに純潔そのものの如きカミラに心惹かれ、ボルジアの命令の実行を躇うようになった。そしてついにボルジアの軍隊を迎え撃つデル・モンテ軍の指揮をとるにまで至る。この戦でヴァラノ公は重傷を負い、カミラを愛するオッシニの心を見ぬき、彼に後事を托して逝った。しかし、重囲をうけたデル・モンテの城は糧食も尽き危殆に瀕するに至り、オッシニは一身を犠牲にして和をむすぶ決意をした。ボルジアは百姓出身のオッシニの正体を曝いた上、裏切者として彼を極刑に処するように命じたが、オッシニの従者マリオ・ベリの機智で一命を全し、母親のモナの住む故郷に身をかくした。拷問の傷も癒えたオッシニはベリからカミラが幽閉の身となっていることを知るや同志を募ってデル・モンテ城内に潜入し、占領軍隊長のドン・エステバンを斃して城を奪回した。領民の歓呼のうちにオッシニとカミラの結婚式が行なわれたのは、それから間もなくのことであった。