「恐怖の夜(1933)」のストーリー

その頃、市の近郊では夕方となれば殆ど外出する者はなかった。それは殺人鬼が横行するからだった。中にも郊外に孤立するラインハート荘付近は殊に淋しかった。事実、殺人鬼はこの近くだけで2回も人を殺している。彼は警察の大見出しを切り抜いて犠牲者の死骸にピンで止めて置くのだった。ところが遂にラインハート教授がその書斎で殺され、例の切り抜きが置かれてあったので俄然大騒ぎとなった。殺人鬼が人家内で犯行したのはこれが最初だ。ラインハート相には教授の養女メアリーと、甥になる若木科学者アーサー・ホーンスビーと、インド人の侍僕デガー、侍女シカがいた。教授横死の報に弟のジョンが妻のサレーを伴ってやってきた。遺産はメアリー、アーサー、ジョンのみならず2人のインド人にも多額に分配される旨遺言されていた。メアリーはアーサーと許婚者の間柄だったが、新聞記者トム・ハートレーと恋し合っていた。アーサーは常時呼吸せずして任意の時間人間を仮死させて置くべき薬物を発見し、それを自ら実験しようとしていた。亡くなった教授はこの実験に非常に興味を持っていたが、アーサーは大学院の大家連を招待して極秘裡にラインハート荘で仮死実験を行うことになった。招待された学者の1人がアーサーに新発見の薬剤を注射すると、アーサーは用意された棺に仰賦したまま地下数尺に埋められた。数時間経って自室でジョンが殺害され、例の切り抜きが置かれてあった。ところがその時刻には殺人鬼は負傷して捕われて病院で死亡したのだった。トムは不審に思ってメアリーを訪ねて来た。その頃は警部ベイリーの一行もラインハート荘を固めていた。シカはお告げあると称して降霊会を催し、家族全部と来賓の学者達全部が密閉した部屋で円卓を囲んで席につき、扉の外には警官が立ち番した。電灯を消して降霊会が始まると、シカは霊眼に殺人鬼の姿が見えるというと、デガーは止めろ、その名をいうな、と命令するのだった。それには無頓着にシカはますます殺人鬼の名を言わんとした。途端に彼女は何者かに短刀で刺されてしまった。隣席に座していたデガーが妻殺しとして捕縛された。メエリーはデガーはそんな男ではないと弁護した。警部の命令でアーサーの生き埋め現場が掘り返されると棺は空虚だった。トムは地下室を発見して財産横領の目的で伯父を殺したアーサーの所在を突き止めた。