「恐怖の手」のストーリー

ティンドル博士は妻のルースを殺害した。ゴム手袋をはめて殺したのだ。ルースの手のに破損した時計を握らせ、何かの合図であるかのように1本のリボンを窓掛の外に垂らしておいた。こんな後始末の最中に電話のベルが鳴った。同じアパート住まいの友人からである。ティンドルは妻が側にいるかのようにわざと電話の最中に妻に話しかけるふりをした。そして外出する途中にも他の医師やアパートの主婦に会ったので、妻の病気のことを話し、次には役店に立ち寄って薬を妻の許へ届けてくれと頼んだ。こんなことがためされているようとは知らず、ルースと恋仲であったフランク・マーシュという青年はナイトクラブからの帰途、妹のヴェラと別れて1人でルースを訪問した。窓掛のリボンを見て不安に思いながら裏口から入った彼はルースの死体を発見して仰天している折柄、扉を叩くものがある。驚き慌てた彼はそのまま逃れ出たが、扉に残った彼の指紋や彼の当時の行動にことごとく彼に不利で彼は犯人と目されたのである。事件は明るみに出た。その謎を解くべき当局者は警官カーターとマッキンレーである。2人はまたとない親友だったがことひと度婦人に関すると、たちまち変じて仇同志となるという間柄である。今度の事件でも彼ら2人は窮地に陥った。容疑者フランクの妹ヴェラのことで2人はしのぎを削ったことがある。ことにカーターは未だに彼女に少なからぬ望みを抱いているところから異常なる執着をしたのである。この2人の探偵が現場に赴くと同時にティンドルは帰宅して、非常な悲しみの様を見せ、妻の仇を報いるためとして、2人の探偵に力を協せて犯人の残した物件の鑑定につとめた。そしてマッキンレー説に賛成して、フランク・マーシュをルース殺しの下手人となした。かくて無実の罪でフランク・マーシュは死刑を宣告される。