「赤新聞」のストーリー

米国一の大新聞と称される紐育のプレティン新聞の編集長マーク・フリントは善良な男だったが、職務の上では頑固一徹で、あくまで個人の情実を避けて事実を発表するという固い信念を持っていた。社長のフランクリンは彼の暴露主義には少なからず反感を持っていたが、事実、彼のおかげで日ごとに読者の増加してゆくプレティン新聞としては、今さら彼を手離すわけには行かなかった。ある時社長の恩人に当たる教育家アーノルド氏の実弟が警官を射殺した事件があった。そして社長及びアーノルド氏の切なる頼みがあるにも係わらず、彼は例に依って情け容赦なくこれを発表してしまった。もちろんこうした事がたび重なるにつれて、社長はじめ部下の新聞記者質に深く怨まれる様にあなった。こうして新聞社においては機械そのものの様なフリントも、ご多分にもれず妻を非常に愛する男だった。しかし夫の仕事を嫌い、夫の態度を憎んでいる妻エディスは、次第に夫に対して冷淡になると共にかねて彼女に恋をしていたフリントの財政顧問であるニューヨーク屈指の銀行家ノールにひきつけられて行った。2人の仲が進むににつれて日ごとに深く成っていく悩みに耐えかねたノールは、ある日彼女に駆け落ちをすすめたが、さすがに即答をしかねて翌日の返事を約して別れた。ところが翌朝フリントはちょうどその頃ノールの銀行がある大きな失策のために財政危機に瀕していることを知って詳細を危機にノールの家を訪れたが、彼が旅行の用意をしているのを発見して彼に誠意なきものと認めた。果然その日の夕刊にはノール事件が発表され、財界はたちまち混乱に陥った。続いて彼の命令により記者と写真班が八方に飛び、ノール事件の材料が続々彼のもとにあつまった。やがて、その中に自分の妻の秘密を見いだした時、さすがに彼も顔色を変えた。彼の信念はこうして事故の家庭の腐敗を明るみに暴き出さなければならなくなった。信ずるべくあまりに思いがけない事柄に彼は直接妻の口から事実を聞きださなければ承知が出来なかった。そして妻の心が完全にノールのものに成っていることを知るや、男としての意気地から遂にノールを射殺してしまった。やがて彼が警察に自首して出たころ、既にこの事件の顛末が彼自身の手によって新聞に発表され全国に大センセーションを巻き起こしていた。