「仮の塒」のストーリー

ディヴ・ロバーツはいい若者だったが、彼の職業というのは地方を渡り歩いて行くいかさまな拳闘試合団の囮であった。というのは、ディブはその一行の先廻りをしていてその土地で名を売り、その上で改めて後からやってきた仲間中の軽重量選手バトリング・ロフと拳闘試合をし、その試合前までに有利な立場をとっていた彼が、試合となると手もなく負けて、その賭金全部を楽に仲間中にすべり込ませるたあたったのである。物語はこのディブが例によってマネージャーの命より先廻りして油田地の町ブーントンへ出かけて行った時に始まる。ディブはその町で働いている内にレストランの娘マージョリーと恋仲になった。ある日、彼はこの店からパイを盗んで逃げ出し危く汽車に轢かれそうになった孤児のクレムを救った。このマージョリーと恋仲となった上に子供の命を救ったということは先廻りして名を売ろうとしていたディヴにとってはもう大成功であった。が、そうしている間にディヴをこの上もない豪い男と信じ悪戯を止めて立派な人間となろうと考え始めたクレムの真心と、マージョリーの潔さとが、次第に彼の心の中に今までに彼が考えても見なかった気持を芽えさせて行くのであった。バトリング・ロフの一行がいよいよこの町にやってきた。ボクシング試合の日が近づいて来た。この時、クレムは町の子供と喧嘩をして帰って来た。ディヴはクレムに喧嘩を固く禁じて置いたのである。それを破ってクレムが喧嘩をしたのでディヴはクレムを革紐で打ってことの原因を白状させようとした。クレムは強情に黙っていた。が、マージョリーの口からクレムはディヴがいかさま師であると町の子供から言われたのを怒って喧嘩を始めたのだと聞かされた時に、ディヴは子供の己れに対する信頼の程に動かされた。彼はマネージャーを訪れてボクシングの中止を申出でた。が、中止をすれば人々の賭金全部がこのいかさま拳闘仕合団の手に渡ることを知った時に、彼は人々のために、そして恋人やクレムに励まされて万勝目はないと知りながらも、華々しくリングに立ってバトリング・ロフと闘うことになった。彼は初め散々に叩きのめされた。が、偶然の機会から彼は反対にロフを圧し続けて遂にそれをノックアウトした。男となったディヴはクレムと相抱いて喜んだ。