「金に憑かれて」のストーリー

19世紀末のある冬、紐育でのことである。娼婦のハンナ・ベルは怪我をした息子のドニイを施療病院に伴った。ドニイはひどく膝を挫いて居るので、数日の間施療患者として入院することになる。病院の出口でハンナは捨ててある新聞を拾い上げて経済欄を読んだとたん、激怒に満面朱のごとくなってニッカ・ポッカ銀行へ駆けつけ、彼女の貯金全部を払い戻しを要求した。それは銀行頭取となったジョン・バートンには一文たりとも自分の金を預けて置かれんという理由なのである。その昔、ハンナとバートンは婚約の間柄だったが、バートンは一言の釈明も無しに彼女を捨て去ったのであった。ハンナは、その後結婚した放浪者の夫の死後は極端な守銭奴となり、息子のドニイを国中で一番の金持ちにする事を唯一の野心として来た。そして今やハンナは巨万の富を現金及び公債出積み上げたのである。ハンナの幼なじみで慈善家のケイトはある日施療病院を訪れて、ハンナの息子を見出した。それを種にケイトはハンナに慈善寄付金を無理に出させた。ケイトはドニイのためにハンナの生活態度を改めさせようと常に試みたが無駄であった。月日は流れてドニイは大学を終え、文筆で世に立とうとしたが、ハンナは無理にドニイを銀行に就職させた。ケイトはドニイに同情して、彼を救うためにハンナとバートンの和解を計った。この試みは失敗したがドニイとバートンの娘エリザベスは恋に落ちた。これを知ったハンナはバートンが彼女の金を横領する魂胆だと誤解して彼を責める。バートンは若い者同士の事に干渉せぬと答え、そのうちに2人は結婚してしまう。1905年の金融大恐慌の際、バートンの銀行も大打撃を受けついにバートンは全財産をハンナに奪われるにいたった。新婚旅行から戻ってこの事実を知ったドニイは母と絶縁すると言う。絶望と悔恨に打ち砕かれたハンナは病気となりケイトの看護を受ける。ケイトの計らいで、ドニイ、エリザベス、バートンはハンナの枕元に来たり、ハンナと和解が出来た。