「悲しみよこんにちは」のストーリー

あの夏からは総てが変わった。何もかもが永遠に--1年前の夏、17歳の私は全く幸福だった。海を見下ろす南仏セント・トラペッツの丘の別荘に私たちはいた。母を15年前亡くした父レイモン(デイヴィッド・ニーヴン)と、父の愛人エルザ(ミレーヌ・ドモンジョ)と、私、セシール(ジーン・セバーグ)の3人。父は41歳の事業家で、女にもて、親切で朗らかで、私を愛していた。半玄人でワンサ女優のエルザは、数多い父の女友達の1人。こういう友が、父に必要だということは、私はよく解っていた。海での最初の日、私は若い法科の学生フィリップ(ジョフリー・ホーン)と知りあった。私たちが海辺で最初の接吻をかわした日、母の友達だった、デザイナーのアンヌ・ラルサン(デボラ・カー)がやってきた。優雅な、洗練された、夫と離婚した中年の彼女。私たちの気楽な生活が、彼女の出現によって終わりそうなことを私は直感した。愛人であるエルザが共に生活していることを不快に思った彼女も、結局は私たちと一緒に暮らすことになった。しかし、父とアンヌはだんだん親密になり、エルザと私は孤独になっていった。私にはまだフィリップがいたけれど、エルザがまず我慢出来なくなった。カジノに行った夜。消えてしまった父とアンヌを探して、2人の囁きを暗闇の自動車の中で私が聞いた夜、エルザは私たちの所へ帰って来なかった。翌朝、父はアンヌとの結婚を打明けて私に賛成を求めた。中年の恋を得た女性の美しさ。それが私にはねたましかった。海辺のパラソルの下で、私はフィリップと激しい接吻に身をまかせた。それをアンヌが見たのだ。激しい叱責、勉強のこと、フィリップと会ってはならぬこと、将来のこと等々。けれど、私はもう子供じゃないのだ。遊び人だった父を真面目な父に変え、私まで変えようとするアンヌ、大嫌いな女。私は彼女の詰問にあって、夜の部屋をとび出した。裸で眠っていたフィリップの部屋で、私は初めて彼の激しい愛撫におぼれた。私は復讐の片棒をエルザにかつがせた。フィリップと彼女の連れだった姿を見せつけて、父の嫉妬をかきたてようというのだ。計画はやがて実を結んだ。その日の昼すぎ、父は人に会うのだと外出した。やがて散歩に出たアンヌのあとを私はつけた。そして、木陰で聞いた父とエルザの忍び笑い。アンヌは家の方に向かって走った。彼女は涙を流していた。そんな彼女を、今までどうして私は想像しえたろう。待って、アンヌ、許して--すがる私に、彼女は接吻して、自動車を猛烈なスピードでスタートさせ、走り去った。自動車が崖から落ちて、彼女が死んだことが知らされたのはその日の午後だった。この夏7回目の運転事故として。--エルザは南米に行き、フィリップとは葬式以来会っていない。残った父と私。あの時から、どの日も私にとって暗い。夢の中でアンヌを呼び、また意味のない1日を迎えようとする朝、私はつぶやく、悲しみよ、こんにちはと。