「パーマネント・ブルー 真夏の恋」のストーリー

瀬戸内海の島々の緑が、夏の太陽に映えて一段と美しい愛媛県今治市のとある漁港。その日、一人の女が砂にうずくまって、まるで死人のように動かないでいるのを少年は見た。女は眼を開いた。顔色が悪い。身なりも汚ない。ズック靴も泥で真黒だ。ヒッピーというのか、まるでドブねずみだ。少年は、かかわりたくないと思いそのまま素通りしたが、かなり行って足を止めた。その女のことが気になった。病人かも知れない。一体、何者なのだろう。少年は女を自分の家へ連れていこうとした。寝かせて、食事をさせれば元気になるかも知れない。少年の家は旅館を営んでいた。女を部屋に寝かせて、死人のような寝顔を見た。少年と眼が合ったが、口をきこうともしない。有難うでもないのだ。なんて奴だ、元気になったら叩き出してやる、少年はそう思った。何日か経った。女は少年の旅館で働きだした。それがとても楽しく見えた。夜遅く、女の湯上がり姿を見て、少年はドキンとした。その晩、少年は女の部屋に西瓜を届けた。女は寝ていた。突然「機動隊粉砕、赤学同センメツ、熱い!燃える!」と女は小さく叫んだ。寝言を聞いて、少年は愕然とした。あくる日、内ゲバ殺人事件の犯人が今治あたりに潜伏しているとの情報で、警察の捜査が軒並み開始された。少年は夢を見た。女が手錠をかけられて、連れていかれる夢だった。そうだ! 女を安全な場所へ連れて行ってかくまってやろう、と少年は思った。月の光が女の顔を美しく照らし出した。少年はその頬に一筋の光るものを見た。びっくりして、女の顔を覗き込んだ。女は不意に少年の手を握りしめた。女は泣いていたのだ。まだ子供でしかない男の胸に顔を埋め、肩をふるわせ泣いていた。翌朝、少年と女は別々に港を離れて、島へ逃げた。女は黙ってついて来た。少年は島の裏側にある洞くつに女と向った。穴の入口には雑草がおおい茂って入口をそっと穏していた。草と草の間には、海があり、空があり、女の眼は輝いていた。この洞くつで二人の奇妙な同棲生活が始った。夜、二人は海に出た。少年も女も全裸になって泳いだ。冷たく気持のいい海の中で、女は小さく叫んだ。「あんたを愛してるわ、初めて逢ったときから。あんたのような人は初めて」と。二人は抱き合った。情熱が真夏の太陽のように激しく燃えた。甘い、いままで体験したことのない感触だった。いつかこの島から逃げよう、そして二人で生活しよう。少年は心の中で決め、女に話した。女は大きくうなづいた。少年は、当分の生活のための物資を調達しようと島を離れた。だがその頃、警察の手はすでに町全体に伸びていた。女が島へ逃げたことも分っていた。「若林京子だね」「一緒に来てもらおうか」刑事にうながされて、女は素直にうなづいた。女が捕ったことを少年は知らずに島へ戻って来た。島に女はいなかった。頬から涙がとめどなく流れた。タ陽が沈んで、すでにあたりは暗くなりかけていた。夏の終りも近いようだ。二人が想い出のために書いた文字が、少年の眼にあらためて映った。--パーマネント・ブルー 八月のいろ ぼくのこころ

今日は映画何の日?

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