「かたみの傑作」のストーリー

クリストファ・ビーンと称する無名の画家の絵が彼の死後10数年にして一躍その価値を認められたというのがことの発端である。ニューイングランドの片田舎に住む医師夫妻のハゲットもとに19年間の忠実に働いた老女中アビイはシカゴでなくなった1人の兄の孤児たちの世話をするために暇を取ることになり、今日しもハゲット家から去ろうとする日の出来事である。昼近くニューヨークから訪れて来た見知らぬ紳士があった。彼は10数年前にこの地に住んでいた貧乏画家クリストファ・ビーンの親友だと称し、彼がハゲット医師に対する薬代の借100ドルを故人の遺書によって返しに来たと言う。そして故人を忍ぶためにビーンの描いた絵を記念に貰いたいというのでハゲット夫妻は喜んで残っていた1枚の絵を与えた。続いてニューヨークから第2の客ローザンが来た。これがまたビーンの親友で借金を返しに来たがビーンの絵が会ったら全部を1000ドルで買おうというのだ。驚いたのはハゲット夫妻である。ビーンの絵が金になるならと故人が生前借金のかたに残した10数枚の絵の行方を調べたが、大分以前妻君が焚火に燃してしまったことを思い出してガッカリする。残っているのはビーンと親交があった老女中アビイの肖像画1枚だけしかしそれはアビイが秘蔵の1幅なのだ。ニューヨークからの第3の客美術批評家のデヴンポートが到着した時はハゲット夫妻は正に狂乱の有様である。アビイの肖像画1枚だけでも1万ドル以上の価値があると知った夫妻は悪辣手段を弄してまでもアビイの絵を巻き上げようと決心し、甘言を以てアビイにその絵を売ってくれる様に頼んだが、アビイは金をよりも故人に対する愛着のために絵は手放せぬと言う。そしてハゲット夫妻がかつて焼き捨て様とした10数枚の絵も全部アビイが拾い出して鞄の中に蔵ってあることがわかった。そしてアビイはビーンの生前に彼と結婚していたことを鐙明したので故ビーンの作品は全部彼女の所有と確定しハゲット夫妻の大欲の夢は醒めたのである。