「陽炎の夢」のストーリー

欧洲大戦に出征して名誉の負傷をしたドミニィク・プラァは許嫁のイゾベルと共に転地療養に赴いていた。許嫁とはいいながらイゾベルに対してドミニィクは愛を感じてはいなかった。彼はイゾベルが代表する社交界に嫌厭を覚えていたが偶ま何処へ行くか放浪のジプシィの一隊を眺めてその自由な境地を羨んだ。その時彼の伯父が病気危篤という電報が着いたので彼はイゾベルにせき立てられてパリへ帰った。そして伯父の葬式を済まし彼は伯父の絹織物工場の支配人となった。しかし彼は支配人としての仕事は何もせず絵を描いて日を送った。彼の姉妹達や許嫁の兄弟達はそれを憤慨して彼の絵を破いて罵った。ドミニィクは健康診断をして貰ったが身体に別状はなかった。それにも苟らず彼の神経衰弱的傾向は昂って遂に池に投身した。彼を救い上げた人々は彼を狂人扱いにして寝床柱に縛付けた。彼はイゾベルの兄の騎兵大佐の自動車に乗って逃走し、追跡に人々をまいて大佐の制服を着て自動車を棄て行遭ったジプシィの一隊に加った。ドミニィクは軍服をジプシィの着物と交換した。そしてブルタァニュのある町で彼を捜索中の家族と出合ったが又もや巧みに逃れて了った。ジプシィの乙女シルダは頭分のセッキに口説かれるのを嫌い、ドミニィクと二人でキャンプを脱走した。彼女は始めドミニィクを警察に突出して捜索懸賞金をもらうつもりだったが二人でさまよい歩くうちにドミニィクを深く恋して了った。しかし彼はその愛を知らなかった。彼はある村で村長の許嫁の肖像を描いてやったので村長の結婚式に招待された。ところがセッキが来合わせたために大騒動になり結局ドミニィクの身分が曝露し二人は彼の家族が到着するまで留め置かれた。シルダが彼の家族に辱められた時ドミニィクは彼女の愛を知りイゾベルや大佐を侮辱した。かくてドミニィクはシルダを妻とする旨を宣言して家族を驚駭させ、村人達に悦ばれた。