「影に怖えて」のストーリー

ニュー・イングランド州のアーキーという小さい漁村に、ある嵐の夜1人の中国人が難破船から打ち上げられた。村の漁夫の大勢が嵐のうちに犠牲となった事が報ぜられて、その中にはダニエル・ギブスという常日頃憎まれ者も含まれていた。ギブスの若い妻シンパシーは、残酷な夫の死によって、やっと晴れ晴れしい日を送る事が出来るようになり、この村へ赴任して来た牧師ジョン・マルデンと結婚する事となった。ジョンは、今は洗濯屋をして生計をたてている中国人のエン・シンに親切をつくし、キリストの教えを説くのであったが、孔子の教えを奉ずるエン・シンはそればかりは受け入れる事ができなかった。マルデンの幸福を一挙に破壊する大事件が起こった。それは死んだはずのシンパシーの先夫ギブスの名で500ドル貸さなければ自分の生きている事を発表するという脅迫状がマルデンに届けられたのである。彼は親友のネート・スノウに事情を打ち明け500ドルを借用して指定された樹の下にそれを置く事にした。エン・シンは計らず2人の話を聞いて、日頃親切な牧師に同情する。マルデンは次の日曜日説教の席で自分の不明を恥じ辞職してしまった。エン・シンは病重って臨終に迫る。牧師や町の人々は彼のもとへ駆け付ける。キリスト教を奉ずる牧師の崇高な精神は異教者のエン・シンに深い感激を与え、彼は牧師を欺いた偽りの友をあばいて、牧師一家の幸福を保つとともに、自らキリストの教えを信ずる旨を語って、住居とする小船の綱を断ち故郷を望みつつ永遠の幸福に憧れてゆくえも知らぬ大海原に漂い出るのであった。