「バナナシュート裁判」のストーリー

群馬県高崎市。公立高校に通う福男、広美、和比古の三人はこれといった進路も決まらないまま三年の秋を迎えようとしていた。夢もなく生きている三人には高校生活の思い出もない。そんなある日、猪子想次郎と名乗る正体不明の風来坊と出会う。男は四〇歳にもなるのに夢に生き、一人でバナナシュートに夢中だった。ボールのないサッカーで遊んでいるのである。初めは想次郎を怪訝そうに見ていた三人だが、やがて彼の生き方に感化され、傾倒していった。想次郎は一人で中南米へ旅立ち、三人もそれぞれの想いを胸に都会へ飛び出した。しかし理想と現実は違い純情朴訥な福男も自由を追い求める広美も時代遅れのアナーキストの和比古も挫折を迎える。それでも自らの意志でストリッパーとして生きていこうとする広美の姿は福男と和比古にはショックだった。また二人は想次郎が中南米などには行かず高崎にいた事実を知り、裏切られたような気持ちになった。しかし、よくよく考えてみて福男は想次郎の言いたかったことがわかったような気がした。そして彼も想次郎のバナナシュートに加わっていくのだった。