「影無き男(1934)」のストーリー

発明家クライド・ワイナントは女秘書のジュリア・ウルフとのいざこざから妻のミミと離別して永年独身生活を送っていた。彼の娘のドロシイと義弟のギルバートとは母方に引き取られていた。ミミはクリスと言う若い男と同棲していたがドロシイは母を嫌って父のクライドを慕っている。クライドは発明上の用件で誰にも行き先を知らさぬ秘密の旅に出た。そして金の入用な時は顧問弁護士のマコウレーを通じて秘書のジュリアに金を送らす事にしていた。ドロシイはトミイという青年と恋に落ち結婚する事になっており、その結婚日が迫っているのに父クライドからの消息は絶えた。母のミミは心配の余りジュリアの許へ来てクライドの行き先を聞こうと訪ねてくるとジュリアは何人かに惨殺されていた。クライドは依然として姿を晦ましたままなので、嫌疑は彼の上にかかった。今は職をやめて田舎に引っ込んでいた名探偵ニックは偶然ニューヨークに出てきてクライドと周知の間柄であるというので、いやいや事件を依頼されてしまった。クライドの失踪ご3ヵ月目に又第2の殺人事件が起こった。それもジュリアに関係のある男だった。ニックは単身クライドの留守宅へ踏み込んでまた1個の死骸を発見した。死後時日を経過しているので、何人とも判明し難かったが服装その他からクライドに恨みを抱いていた男らしく、これも又クライドの犯行だと断定された。しかしニックだけはこの死骸がクライド自身であると判定し、犯人の見当も付いたが更にその確認を握るためにクライドの周囲の人間全部を自宅の晩餐に呼んだ。その所にはミミもドロシイもクリスも弁護士のマコウレーもジュリアの前の情夫のモレリも、前科者の雇人タナーも警察部長のギルドもその他あらゆる関係者が網羅された。ニックは会食中に立ち上がって、事件に関する独自の推察を純純とのべついに土壇場まで押し詰めて会食者の一人を犯人だと指摘し、首尾よく彼を逮捕することが出来た。