「二十四の瞳(1987)」のストーリー

昭和三年、瀬戸内海に浮かぶ小豆島。この岬の分教場に大石久子という若い女性教師が赴任した。洋服を着て自転車で通勤する彼女は、村の人々から好奇と非難の目で迎えられる。分教場では今日から小学生になる十二人の子供たちが久子を待っていた。ソンキと呼ばれる磯吉、キッチンこと吉次、竹一、正、ニクタこと仁太、マスノ、ミサ子、松江、小ツル、早苗、富士子、コトエと性格は様様だったが可愛い子供たちだった。九月になり、子供たちと浜辺で歌を歌っていた久子は、彼らがいたずらで掘った落とし穴にはまり足をくじいてしまう。怪我は思いのほか重く、暫く学校を休むことになった彼女のもとに、ある日子供たちが見舞いに現われた。十二人で相談して二里もある道を空腹と疲労にさいなまれながら歩いてきたのだ。彼らの久子を慕う気持ちは、村の人たちの目を変えさせたが、彼女は遠い分教場へ通うことができず、やむなく本校に転任することになった。子供たちの涙に送られて、久子は岬を去った。五年の月日が流れ、六年生になった子供たらは本校に通うようになった。その秋、久子は遊覧船の機関士、正吉と結婚した。子供たちにも人生の荒波が押しよせ、母親が急死した松江は奉公に出された。修学旅行先で偶然にも彼女を見かける久子。そして、子供たちの卒業とともに久子は教壇を去った。それから八年、戦争のさなか、コトエは肺炎で死に、正、竹一、仁太が戦死した。久子も正吉、娘の八律、母、民を亡くした。終戦を迎えた後、彼女は再び分教場の教師となる。コトエの妹、松江やミサ子の子供の姿もあった。ある日、久子を囲んでかつての教え子たちが歓迎会を開いた。美しい声で思い出の歌を歌うマスノ、記念写真を愛おしく指でなぞる失明した磯吉……と、二十四の瞳は十に減っていた。久子の目にはとめどなく涙があふれた。数日後、岬の道には元気に自転車のペダルを踏む久子の姿があった。