「カヴリア」のストーリー

スペイン王国の旗章を翻した大船が5大洋に覇を称していた頃の物語である。バルセローナの酒屋の主人であったラモン・トレノは植民地で成金になった。城廓のような邸宅と数百の奴隷とを有してその横暴強欲はその地のインド人たちを酷使して泣かせていた。が、この時、彼らのためには救い主、トレノのためには不倶戴天の仇である2人の男があった。一人はタキという異邦人であり、も一人は神出鬼没の覆面の騎士であった。トレノには一人の息子があった。名をカルロスと呼び色好みの愚か者である。が父親は彼に配するにアラゴンの名家の姫ルチアを以てしようとした。ルチア姫がその結婚を嫌うたのはもとよりのことである。トレノは息子の結婚を祝わんとして酒宴を張ったが、その時、彼は愚かにも覆面の黒騎士を防ぐためにタキを雇ったのである。タキと覆面の騎士とは縦横人無きが如く嘲笑的な振舞いをしてトレノの邸内を威嚇して廻った。そして悲しい想いに沈んでいるルチア姫には、私のある限りは決して御心配遊ばさるるな、と囁いたのである。遂に結婚の式場を驚かしトレノの配下ガストンと大格闘の後、覆面の騎士は馬を奪いルチア姫を抱いて邸を抜け出した。その後、2人の消息を沓として絶えたが、ある人々はあの覆面の騎士によく似た武士が美しい妻を抱いてあのアラゴンへ航行する船の甲板にいるのを見かけたと噂をしていた。