「海魔」のストーリー

場所は西インド諸島のある一孤島。島には白人といっても海綿採取に従事する少数を除いてはほとんどいない。彼等の唯一の享楽は酒で、従って怠惰、殺伐の気風がみなぎっていた。島の支配者というよりも親分というべきアンドンには養女でニナという美しい混血の娘がいる。彼女はアントンの息子カールと末には夫婦になることになっていたが、彼女に想いをよていたジュアンの奸策にかかってカールは海の魔物の犠牲になった。海の魔物というのは、巨大なエイの一種で、刃のごときヒレを有し、その凶暴なること時に船をも覆し多くの人命を奪うというので船員の恐怖の的となっていた。ニナはカールの安全を願うあまり、原住民の信仰するヴーパー教のお守りをカールへ与えんとしたが、彼は十字架を示して問題にせず、遂に一命を失ったのでそれ以来、彼女は一層海の魔物を憎み、十字架までも呪っていた。そして海の魔物を退治したものに自分の身を任せると行ったので、2人の男がそのために大切な命を失うような結果を招いてしまった。彼女は彼等の亡霊に悩まされた。彼女は今さら、自分の無謀を悔いているおりから、島に新しく来たシムス牧師の祈りを聞いて感動をうけ、彼を信頼するようになった。シムス牧師とはその実、悪魔島を脱出して来た囚人で、その筋のお尋ね者で、彼の首には莫大な懸賞金がかけられてあった。ジュアンは早くもシムスの素性を察し真相を確かめようとしていた。これを感づいたシムスは再びこの島を脱出せんとしたが、ニナの愛情に引かれ躊躇しつつも遂に意を決して彼女に打ち明けたが、彼女はむしろ彼が牧師でないことを喜んだ。そして一緒に島を逃れることに相談が纏まったが、ジュアン一味のものに乱闘のあげく捕らえられ、悪魔島に護送されることとなった。だが、その途中恐るべき海の魔物が現れ、船は危険に瀕した。恐怖におびえた船員はシムスの縛を解いて救いを求めた。シムスはようやく船に這い上がることができたがジュアンは姿を見せなかった。シムスは海の魔物に打ち込んだ銛のロープを切って島に戻った。島に待っていたニーナは彼を喜び迎えたのであった。