「若き作曲家の旅」のストーリー

1907年、第一次ロシア革命挫折後のグルジア。首都チフリスの音楽大学を卒業したばかりのニクーシャ(レヴァン・アバシーゼ)は、恩師の紹介状と最新型の録音機、訪問先を記した地図を携え、グルジアの古い民謡を採取する旅に出発した。まず、村人の信頼厚い医師エリズバルを訪ねるため馬車に乗っていた彼は、木陰に倒れていた不審な男を助ける。エリズバルは、ニクーシャにこの旅を思い止まらせようとする。だが、民族音楽の研究に情熱を燃やす青年は承知しなかった。翌朝、エリズバリの兄、シャルバが死体となって運ばれてきた。若者の身の安全を危惧する医師は、ニクーシャをチフリスへ脱出させようとする。医師は彼のために、女主人に薬を届ける機会にカタレリ家に一泊し、その翌日はイトリエリ兄弟の元に身を寄せる、という手筈を整えた。道案内は、前日倒れていたあの男、レコ・タタシェリ(ギヤ・ベラーゼ)である。レコは自惚れが強く、激情家でしかも雄弁な奇妙な男だった。彼は、ニクーシャは革命組織から送り込まれた密使で、民謡採集はその隠れ蓑と勝手に信じ込む。レコは医師の忠告は意に介さず、次々と若者を仲間に引き合わせる。やっとのことでイトリエリ兄弟の家にたどり着くが、寺院の爆破事件に巻き込まれて連行される。厳しく追求されたレコは、自ら煽動者であることは認めたが、爆破については無実を主張したが、ニクーシャの地図が有罪の証拠となってしまう。2人が立ち寄った先の男たちが次々と捕らえられた。官憲は弾圧の口実を探していたのだ。レコは絶望のあまり自殺する。ロストフ・イトリエリは己が命に代えて若いニクーシャを釈放させる。この時、初めてニクーシャは自分の無分別を恥じ、レコや村人を思いやる。男たちが連行されていくが、突然、護送兵が員数袷に通りかがりの農夫を一人捕まえ、囚人の列に加えた。村には主を失って人影の絶えた家々が残された。